【川崎大輔の流通大陸】コロナと共に生きる自動車関連企業

新車販売台数は、コロナ自粛により大幅な落ち込みとなった。リーマンショック以上の大きな影響を受けたとの声も聞こえる。今回は、車販売と整備を行う企業、及び自動車アフター部品の販売企業、2社におけるコロナに対応の取り組み方法や考え方について紹介したい。

コロナ禍の整備事業の結果は?

鈴木自工株式会社(鈴木将仁社長、東京都江戸川区)では、今年3月から5月は売り上げが減少。一方で、6月、7月は対前年比でプラスとなり会社全体の売り上げの落ち込みは下げ止まった感じだ。

鈴木社長は「うちは整備が柱となっているため、減少はしましたが、大きな影響を受けていません。車販も思った以上のマイナスにはならなかったというのが本音です。新しい販売店(新店)をオープンし、新しい店長に変え、また軽自動車を多く販売しているという点もあるからかでしょうか」と語る。

業界全体として新車販売台数は、4月は28.6%減少、5月は44.9%減少、6月は22.9%減少と大きく対前年実績を大きく割り込んでいる。2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災の際にも新車販売は大きな落ち込みを見せていた。しかし、整備事業は、ほとんど影響を受けなかった。

景気が悪くなっても整備事業は安定収益を確保しやすいというのを証明された結果となった。確かに特に車検時期などが後ろにずれることにはなる。しかし、法定需要である車検は強い。ユーザーはコロナであっても車検や修理が必要なためだ。

コロナ緊急事態宣言による社内の変化

緊急事態宣言後、鈴木自工ではすべての店舗に消毒液を設置。またフロント(接客)ではビニールシートの透明カーテンを取り付けての接客をすぐに開始した。スタッフは、検温、手洗いを徹底しマスクとフェイスシールドを装着してもらった。

コロナだからといって、パートと新入社員を除き、一般社員は休業を行っていない。特に社員側からも出社したくないなどとの声は聞こえてきていない。社内の会議と研修は、ZOOM活用によるリモートへ移行。また、人材採用に関してもオンライン会社説明会、オンライン面接の対応を行った。

「会議も面接も対面でのコミュニケーションをとりたいと思っていたため、最初は心配でした。しかし、実際にやってみたら問題なく対応ができました」(鈴木社長)。

更に「もっと変えていかなければならないと思っています。車の販売スキームの変更、自動車販売におけるオンライン商談の導入、整備でもオンラインの活用なども必要だと思います。現在、車検は短時間車検が主流で、2時間から3時間待ってもらうという形でやっています。しかし、これからはいったん自宅に帰ってもらったり、買い物に行ってもらったりという、検討もできるわけです。その間のコミュニケーションとしてはオンラインツールを活用してお客様と連絡をとりたい、などの要望がでてくるのではないでしょうか」と語る。

アフターコロナ時代には、より多くの変化を受け入れていく力が大切になってくる。「変えられるところは生き残る。鈴木自工が50年続けられたのは時代に合わせて変化してきたからです。これからコロナと共に生きるという考えが大切です」と、鈴木社長はいう。

今までの価値観を変えていく必要があるということだ。その1つの例として、鈴木自工では、お客様を集めるのではなく集まるようにしていきたいと考えている。今までは、手洗い洗車500円、キャンペーン時には100円などで店舗にお客様を集める施策を重視してきた。しかし、これからお客様が集まる店舗作りがより重要になる。

例えば、google 検索での良い口コミが多く掲載されるような店舗運営を行う。良い口コミを増やすことでお客様の安心、信頼を獲得し、自然と集まる店舗へと変えていく。そのためにはスタッフ一人一人の意識の向上、価値観の変化も重要となる。鈴木自工では、スタッフ全員に「我々の仕事というのは、国民の安定的生活の確保に必要な重要な社会基盤です」という仕事の重要性を伝え、もっと堂々と業務をする社会的意義を共有したという。

スピーディな対応が重要

株式会社マルエム(社長:巖谷祐一社長、東京都板橋区)は、バランスウェイト、ポリ製品(シートカバー、フロアシート、ステアリングカバー、シフトカバー)などの自動車アフターの製品を販売する企業だ。

マルエムでのコロナ対策の取り組みは早かった。巖谷社長自身が、1月23日に武漢が閉鎖された時に海外にいたためだ。海外でのコロナ対策はスピーディだった。マスクを着ける人々の姿を街でも多く見かけるようになった。特に海外の空港ではコロナ対策の傾向は強かった。

しかし、巖谷社長が1月下旬に海外から日本に帰国すると、その緩さに驚いたという。日本の空港の入国審査ではほとんどチェックがなく、マスクをしている日本人もあまり見かけなかった。日本のメディアもコロナの危険性に関して全く報じていなかった。日本の危機感の薄さを実感したという。実際、1月26日に厚生労働省は、コロナに対する水際対策をとった。

しかし、実際にとった方法とは驚くべき方法であった。「中国からのすべての航空便、客船において、入国時に健康カードの配布や、体調不良の場合及び解熱剤とせきどめを服薬している場合には検察官に自己申告していただくように呼びかけを行っている」ということだったのだ。つまり『中国人の良心に期待した自己申告を待つ』という方法だったのだ。日本国民の命を、中国人任せにする対策を堂々ととっていたといえる。それが結果的にどのようになったかは皆様ご存知の通りだろう。

巖谷社長は、帰国後、社内の就業規則の変更を行い、リモートで仕事ができるような社内コロナ対策を進めた。他社中小企業に先駆け、リモートを導入。全社員にノートPC、携帯を支給しテレワークに変更。原則、社員の公共交通機関での通勤を禁止し、社用車で通勤してもらうように変えた。ここまでスピーディにコロナ対策を実行した中小企業は少ないのではないだろうか。

新しい価値観へのシフト

マルエムは、新商品として、コロナ禍用の抗菌ポリ製品を作り、販売をはじめた。安心の日本製抗菌仕様によって整備車、展示車、納車時の汚れ、傷防止及びコロナ対策を行える。自動車整備にくるお客様、そして整備士はじめとする関係者の生命と健康を守り、新型コロナウィルス感染防止に向けた、製品開発の取り組みの1つとなる。

「ポリ製品をお客様、そして整備のスタッフの双方の問題ととらえて利用して欲しいと考えています」(巖谷社長)。つまりお客様の大切な車を大事に取り扱うというツールの意味合いではなく、双方の命を守るという新しい価値観がより大切になる時代へと変化した。「我々の仕事は常に対お客様です。フェイスシールド、マスク、消毒液の対応などをきちんとする。自分が他人(お客様)にうつさないこと、そしてその意識を持つことが重要だと思います」(巖谷社長)。

更に「コロナ前の状態に戻ることはないと思っています。業績の減少ということに関しては、以前の商品やサービスにしがみつくことなく、新しい新商品などの業態で積み上げていきたいです。1年以内に足りなくなった分をなんとかしたいと考えています。また、社内の管理ということでは、業務はプロセスから結果にシフトするでしょう。従業員の一人一人のセルフコントロールがより重要になる時代になります」と語る。コロナ感染の日本での危機感の薄さを自ら体感している巖谷社長の言葉には迷いがない。

どうなるか先が見えないのは確かだ。しかし、このコロナで価値観が変化するのは間違いない。そしてその価値観は明確になりわかりやすくなった。全部の企業がつぶれることはない。変化に対応し生き残る企業になることが大切だ。そのために、各企業が価値観の変化を受け入れ、それらに率先して対応していくことが、アフターコロナを生き残るためには重要になってくるだろう。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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