潜在需要は想像を越えた。予約殺到のフォーカル「調音施工」の現状とは

潜在需要は想像を越えた。予約殺到のフォーカル「調音施工」の現状とは
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フォーカル製の高性能遮音シート(BAMシート、旧名称BAMデッドニングシート)を使用した走行音静粛化プログラム「調音施工」(ちょうおんせこう)が話題だ。

実は前回の記事が予想外の反響を呼び、輸入元や販売店に問い合わせが殺到しているほか、現時点では施工予約も取りにくい状況になっているという。そこで今回は、「調音施工」が気になっている読者の皆さんに代わって、フォーカル・オーディオ・ジャパン(株)の代表取締役である中島敏晴さんに「調音施工」に関する疑問をぶつけてみた。

カーオーディオ界の“外側”にいる
一般のお客様からの期待度に驚く

―前回の記事が掲載された後、問い合わせが一気に増えたそうですね。

中島氏:はい。当社始まって以来かもしれません(笑)。当社の取扱商品は基本的にカーオーディオファンに向けたものですので、これまではそういう方々からのお問い合わせやご注文がほとんどだったのですが、今回は業界の外側と言いますか、カーオーディオ専門店に今までご来店いただけていなかった一般のお客様からの反響が凄い。最近のクルマは静粛性が高くなったと言われていますけど、もっと静かに、もっと快適にしたいという潜在的ニーズが大きいことにびっくりしています。

―車種的にはやはりEVやディーゼル車が多いのでしょうか?

中島氏:実はそうでもないんです。当初はテスラとか、メルセデスやBMWのディーゼルとか、音環境がやや特殊な車種を狙って企画したのですが、実際には高級車からファミリーカーまで幅広く、年式も最新型から古めのものまでさまざまです。それから、世間的には静かだと言われているレクサスのお客様も意外と多いですね。

―おそらく読者の皆さんが一番気になっているのが、実際どれぐらい効果があるの? というところかと思うのですが…

中島氏:当社の直営店(フォーカルプラグ&プレイ本店<木更津アウトレット前>)で施工した事例をもとに申し上げるなら、効果については今のところお客様全員にご満足いただいていると信じています。施工を完了してお見送りした後、わざわざUターンしてお礼を言いに来てくださる方も少なからずいらっしゃいます。音の感じかたは人それぞれですが、毎日お乗りになっているクルマのことはオーナーご自身が一番わかっているはずですから、それもひとつの答えなのではないかなと考えています。

体感的な静けさや快適さの追求は
オーディオの音質追求にも似ている

―具体的に何dBほど静かになるのでしょうか?

中島氏:開発段階ではテスラジャパン様のご協力を得て同型車2台での計測も行ったこともあり、その範囲では最大マイナス3dB程度の低減効果を確認しています。ただ、お客様にとって重要なことはあくまで体感的な静けさや快適さであってスペックではありませんし、当社としてもそこを目標としていないので、数値としては公表しておりません。

―オーディオの音質がスペックだけではまったく語れないのと同じですね。

中島氏:そのとおりです。体感的な静けさと計測値は不思議なほど一致しないもので、そこをオーディオ的なアプローチで解決していくのが「調音施工」の肝心な部分です。数値の追求だけなら自動車メーカーに敵いっこありませんが、聴感の部分では私たちのノウハウにも出番があるのではないかなと。

―「調音施工」はデッドニングの一種だと思っていたのですが、報道資料には「デッドニングとは異なり」とハッキリ書いてありますね。

中島氏:クルマに遮音材のようなものを取り付けて音をコントロールする、という点だけはデッドニングと似ていますが、考え方や目的はまったく違うものです。いわゆるフルデッドニングはキャビンをオーディオルームにするという考えで、フロアや天井、ドアなどに防振や遮音のための材料を大量に貼り付けます。結果的に走行騒音も減る傾向となりますが、あくまでもキャビンの共振を抑えてカーオーディオの音質を良くすることが主目的です。これに対して「調音施工」は、主な騒音源となっているホイールハウスやバルクヘッド(エンジンルームと車室内の間の隔壁)に集中的に施工して、騒音を元から断つことを狙っています。

―あと、費用対効果の高さも注目すべきポイントですよね。

中島氏:そうなんです。デッドニングはお金がかかるというイメージがありますよね。実際、本格的なデッドニングを始めるとキリがなくなって、勧められるままにフルデッドニングを行えば費用も重量もどんどん増えてしまいます。「調音施工」の場合も、たとえば材料を何枚も重ねて貼れば効果がより高まることは判っています。しかし、それではデッドニングと同じマニアの世界になってしまうでしょう。

―オーディオマニアならともかく、一般ユーザーにとってはハードルが高くなってしまいますよね。

中島氏:はい。そこを追加料金なしのリーズナブルな定額費用に設定して、重量増やクルマへの負担も最小限に抑えながら、材料や施工方法を吟味して生まれたのが「調音施工」なのです。「調音施工」をオーダーしていただければ、過剰なオプションやオーディオのシステムアップなどもお勧めすることはありません。

予想外の人気で予約が取りにくい?
「調音施工」の今後の見通しは?

―ただ、予想外の人気で施工の予約が取りにくいということになっているそうですが…

中島氏:はい、大変申し訳なく思っております。ここまでお問い合わせやご注文が殺到するとは想定しておらず、恥ずかしながら対応が追いついていない状況です。材料のBAMシートも品薄になっており、航空便で追加発注をしているところなのですが、新型コロナウィルスの影響もありまして、次の入荷は8月末以降となっています。重ね重ね申し訳ありません。

―他の遮音材ではダメなのですか?

中島氏:似たような遮音材はいろいろありますが、BAMシートに匹敵する性能の材料がなく、当社では効果も信頼性も保証できないため採用しておりません。また施工も、十分な効果を出すためには貼り方など手作業での調整が重要になってきますので、すべての販売店では提供できていないのが実情です。現在、施工は全国に6店舗ある「フォーカルプラグ&プレイストア」を中心に行っており、今後はインストーラー研修や認定店制度などを拡充して施工店を増やしていきたいと考えています。またホームページやカタログでの情報提供もまだ追い付いていない状況ですので、早急に改善していく予定です。「調音施工」にご興味をお持ちのお客様には、どうか今しばらくお待ちいただければありがたいです。もちろん、ご相談やご予約は受け付けておりますので、お気軽にご連絡いただければと思っております。

今回の取材では、オーディオマニアだけでなく一般ユーザーにとっても、愛車の静音化が大きな関心事であることがわかった。また予想外の人気で問い合わせや予約が殺到し、十分な対応ができていないところも正直にお話いただいたが、この点は時間とともに改善されるはずだ。このページでは今後も「調音施工」に関する最新情報をお伝えしていく予定なので、興味のある読者の皆さんは引き続きチェックしていただきたい。

《藤澤純一@Mycar-life》

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