【SUPER GT × DTM 交流戦】日曜のレース2はホンダ勢対DTM軍の様相に…NSXを駆る元F1戦士カーティケヤンが優勝

特別交流戦「レース2」で優勝した#64 ホンダNSX(N.カーティケヤン)。
  • 特別交流戦「レース2」で優勝した#64 ホンダNSX(N.カーティケヤン)。
  • レース2の表彰式。左から2位ヴィットマン、優勝のカーティケヤンと中嶋悟監督、3位デュバル。
  • #64 NSXのカーティケヤンは2番グリッド発進から優勝する。
  • 「レース2」のスタート。
  • 決勝2位の#11 BMW M4 DTM(M.ヴィットマン)。
  • 決勝3位の#28 アウディRS5 DTM(L.デュバル)。
  • 左から2位ヴィットマン、優勝カーティケヤン、3位デュバル。
  • 決勝4位の#1 ホンダNSX(山本尚貴)。

日本初開催の「SUPER GT × DTM 特別交流戦」は24日、富士スピードウェイにてレースウイーク最終日を迎え、この日は「レース2」の予選&決勝が行なわれた。ホンダNSXを駆る元F1ドライバー、インド出身のナレイン・カーティケヤンが優勝を飾っている。

日欧トップシリーズによる日本初競演の“勝負本番2日目”は、前日と同じフォーマットに基づく「レース2」の実施日。SUPER GT/GT500クラスマシン15台とDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)マシン7台、計22台がこの日も全車ハンコック製ワンメイクタイヤを履いて競う。GT500マシンの多くは、前日のレース1とは異なる選手(今季シリーズ戦を戦ったもうひとりのドライバー)がステアリングを握る。

予選は朝9時から20分間、ウエット路面での戦いとなった。トップタイムは#16 MOTUL MUGEN NSX-GTの中嶋大祐がセッション終盤にマークした1分46秒696。ただし、#16 NSXは金曜のヘビーレイン時に大祐の相棒・武藤英紀が大きなクラッシュに遭っており、車両交換によりレース1、2とも5グリッドダウン確定の身、大祐は6番グリッド発進ということになる。

(なお、大祐は今回のレースを最後に引退することを予選直後の場内インタビュー等で表明した。大祐は、日本のF1レジェンドである中嶋悟さんの次男、WEC王者・中嶋一貴の弟)。

レース2をポールポジションから発進する権利を得たのは予選2位タイムの#28 BMC Airfilter Audi RS5 DTM、ロイック・デュバルだ。日本馴染みでもある世界的強豪は前日のレース1でも予選2位だったが、決勝直前にクラッシュを喫して不出走となっていた。その雪辱を果たしたいところ。

14時30分、2周のフォーメーションラップへと発進するところからレース2の決勝が始まった。昼前後には晴れていた空が再び曇天化してはいたが、ドライといえる状態の路面での戦いである。前日同様にローリングスタートから4輪タイヤ交換あり、給油とドライバー交代なしの55分+1周というのがレース基本フォーマットだ。

グリッドは上位1~2列目がいずれも“DTMとGT500ホンダ勢1台ずつ”で、3列目にホンダが2台、4列目にDTMが2台と、トップ8はホンダ対DTM「4対4」の構図(ホンダが2-3-5-6番グリッド)から開戦する。そしてNSX勢が優位に戦いを進めていくことに。

しかし、この日のレースは途中から荒れた。混乱が混乱を呼ぶような流れ、セーフティカー(SC)導入となる事象が繰り返されていく展開となる。そのなかでNSX勢やレクサスLC500勢には接戦状況下での同士討ち的なアクシデントも起き、序盤の一時は上位完全占拠の雰囲気さえあったホンダの支配態勢も次第に崩れていく。

ちなみに今回のスタートとリスタートでは、2列の編隊スロー走行を密集させた状態からバトルに入る「インディスタイル」と呼ばれる方式が原則的に取られており、観客にとっては実にエキサイティングなシーンの連続となったことだろう(最終周となる状況でのリスタートは1列方式に変更されたが)。

ホンダ勢の完全支配こそ瓦解していったが、レース2決勝において終始、安定した戦いを見せたのが2番グリッド発進の#64 Modulo Epson NSX-GT、ナレイン・カーティケヤンである。インド出身、F1参戦歴もある42歳のベテランも、GT500に関しては今季、中嶋悟監督率いるナカジマレーシングで自身初のフル参戦シーズンを戦い終えたばかり(相棒は20歳年下の若手気鋭・牧野任祐)。シリーズ戦では2位が最高だったが、嬉しい“初優勝”となった。

優勝したナレイン・カーティケヤンのコメント
「マシンが素晴らしい状態だった。木曜の練習走行からハンコックタイヤと我々のチームのセットアップの相性の良さみたいなものを感じており、いい週末になる予感はあった。実際にこうして勝つことができ、最高に嬉しい。SUPER GTとDTMがジョイントしてレースできたことも嬉しいし、素晴らしいと思う」

国際派のベテランであるカーティケヤンが勝利し、2~3位(後述)にはDTM勢が入って、表彰台に乗ったドライバーは全員が海外出身者となったレース2。そこに中嶋悟さんが優勝監督として入り、ある意味では今回のイベントを象徴する“景色”になったともいえるだろう。

2位は#11 BMW M4 DTMのマルコ・ヴィットマン、3位は#28 アウディのデュバル。ポール発進だったデュバルは勝利こそ得られなかったが、かつて長く戦ってきた日本で表彰台フィニッシュを果たした。

2~3位の2台は“1周勝負”となった最終周(31周目)、ヴィットマン自身が「エキサイティングだった。特に最後の3つのコーナーがね」という熱いバトルを展開し、最終コーナーをトラックリミットから外れて大回りする格好になったデュバルが(速度を落とさずに済んだのだろう)わずかに先着していたが、チェッカー後すぐに1秒加算ペナルティ適用となり、2位がヴィットマンのBMW、3位がデュバルのアウディという決着になっている。

日本のレースにシリーズ参戦したことがないヴィットマンは、「欧州のファンも素晴らしいけど、日本のファンもそうだね。このスポーツにものすごく詳しいし、こんなにサインをした週末は初めてかもしれない」と、ファンの歓待ぶりに感心、感激している様子だった。

レース2の決勝4位は、GT500勢では数少ない“土日連闘”組のひとり、#1 RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴。5位には#00 BMW M4 DTMで今大会に参戦した小林可夢偉が続いた。6位は“ラストラン”となった中嶋大祐(#16 NSX)。ホンダは上位独占こそ逃したが、トップ6に3台が入っている。DTM勢も3台で、決勝結果もホンダ対DTMはほぼ互角のところに帰結した。

レクサスの決勝最上位は8位の#37 KeePer TOM'S LC500、平川亮。日産勢は前日に続く厳しいリザルトとなり、11位の#23 MOTUL AUTECH GT-R、松田次生が最高位だった。

日本での初交流戦実施に際し、DTMのシリーズ運営団体ITRの長である元F1ドライバー(1987年、鈴鹿初回開催時の日本GP優勝者)ゲルハルト・ベルガー氏は、「レース1のスターティンググリッドに立ってみて、5つのマニュファクチャラーのマシンが揃う状況に“力”を感じた。我々は正しい方向に進んでいると思うし、『キープゴーイング』でいきたい」との旨を話した。SUPER GT側の坂東正明GTA代表も同義のコメントをしている。ともに今後の発展に向けて、確かな感触を得たようだ。

なにはともあれ“大きな一歩”が記された、日本初開催のドリームレース。2020年以降、両者のコラボレーションがどう発展していくのか、坂東代表が以前から語っている「ウインターシリーズ化やワールドチャンピオン(を争う)レースに」という未来が開けていくのかどうか、引き続き注目されるところだ。

《遠藤俊幸》

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