京セラは10月3日、防水に対応した車載用電線分岐コネクタを製品化し、同日より順次サンプル出荷すると発表した。コネクタ事業部長の鷹尾仁志氏は「このすごい可能性を秘めた製品かもしれない」と今後の展開に期待を寄せた。
車載用電線分岐コネクタは、車両のメインハーネスから電線を分岐させ、カーナビやETC、ドライブレコーダーなどのパーツを取り付ける際に使用する製品。同社では1992年に「9215シリーズ」を発売以来、多くの自動車に使われたきた。14年には車両の軽量化に取り組む自動車メーカーのニーズに応え、アルミ電線対応の製品も業界に先駆けて製品化した。
しかし、従来の製品は防水性や取り付けの作業性、コスト、信頼性などさまざまな課題があった。今回発表した「9715シリーズ」はこれらの課題を一気に解決した製品と言っていい。
独自のハウジングロック構造とシール材の組み合わせで、自動車部品ワイヤーハーネスコネクタの試験方法「JASOD616」の高圧洗浄や高温放置試験などの条件をクリアし、高い防水性と信頼性を実現。「これほど高い防水性のものはない」と鷹尾氏は自信を見せる。
対応温度範囲もマイナス40度からプラス85度までと広く、風雨や塵埃の影響を受ける車室外の過酷な環境下でも使用が可能。アルミ電線にも対応し、車両の軽量化にも貢献できる。しかも、取り付け時間を大幅に短縮できる。というのも、被覆剥き作業などの前処理を必要とせず、製品に電線を挟み、ペンチのような工具で押さえるだけなのだ。これまで5分かかっていた作業がたったの30秒で完了するという。
「1~2年後に10億円、3~4年後には20~30億円の売り上げを見込んでいるが、もしかしたら一ケタ増える可能性もある。100億円超のポテンシャルはあるのではないか」と鷹尾氏は話す。
まずは自動車用途で浸透を図っていき、その後オートバイや船舶、野外監視カメラなど多様な市場で展開を図っていく計画だ。また、同社では今回の新製品を機に電線分岐コネクタの製品ブランド「Sheltap」(シェルタップ)を立ち上げ、お客のニーズに応えるために今後さまざまのコネクターを製品化していくという。
自動車業界は現在、先進運転支援システムやコネクティッドカーなどでクルマのエレクトロニクス化が大きく進展しており、電線を使うケースが大幅に増えている。そんな中、今回京セラが発表した車載用防水対応電線分岐コネクタ「9715シリーズ」は強い味方になるのは間違いないだろう。