クルマを通じて地域を盛り上げる! 老舗整備工場が出した「人材問題」解消の答えとは?…睦自動車

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睦自動車の入社1、2年目の社員のみなさん
  • 睦自動車の入社1、2年目の社員のみなさん
  • 今回、お邪魔した睦自動車の「牛川工場」
  • 広々とした作業スペースに充実した設備を備える
  • 入社から1年が経ち、自分でも見違えるように“成長”したのがわかるという
  • 様々な研修のおかげで、会社や仕事に慣れるまであまり時間がかからなかったという話もあった
  • 女性社員の採用にも積極的だ
  • 話を聞かせてくれた、執行役員の中神敏光氏
  • 人材不足の原因は、少子化や若者のクルマ離れだけでなく「働く環境」も影響していると思われる
◆自動車整備にも「人材不足」の波

人口減少や高齢化などで人材不足が社会問題になっている昨今。配送ドライバーや介護士、保育士の不足にはじまり、ここ最近、新聞紙面やテレビのニュースなどを賑わしているのが、自動車の「整備士」不足だ。

原因としては、少子化や若者のクルマ離れによる若い世代の「なり手不足」が挙げられるのだという。確かに、一昔前と比べるとクルマに興味の無い若者は増えたが、原因は決して“そこ”だけでなく、人手不足が叫ばれる業界に共通する「働く環境」も大きいのだと思う。


技術を必要とし、体力も使う、サービス業だから残業や休みという問題も絡んでくるし、給料の問題もあるのかもしれない。決して楽な仕事で無いのは間違いなく、正規ディーラーであったとしても人材の確保に苦しんでいるのが現実だ。

◆人材問題に真正面から向き合う

そんな厳しい状況の中でも、人材の確保と育成に真正面から向き合い、積極的な取り組みで成果を上げている会社もある。愛知県豊橋市に本社を構え、県内4箇所に事業所を展開する老舗整備工場「睦自動車(伊藤友二社長・東脇2-15-1)」だ。同社は、東三河地方全域をカバーするほどの会社規模を誇るが、はじまりは「町のクルマ屋さん」であり、“クルマを通じて地域を盛り上げる”スタンスは今も変わらず、地元ユーザーから愛され続け、その信頼は厚い。




その睦自動車をしても、人材の確保は頭の痛い問題だった。「3年前から、人材に関して考え方を変えました」、こう語るのは、同社で採用や教育を担当する中神敏光氏だ。それまでは、即戦力を求め、技術や経験を持った中途採用が中心だったが、会社の将来を考えた時に新卒の採用に舵を切ったのだという。とは言え、専門卒や大卒の学生のほとんどがディーラーを選ぶご時世。「ウチでは高卒の子たちを積極採用し、自社でしっかりとした教育をしていく道を選びました」と続ける中神氏。

その言葉の通り、昨年は5人、今年は6人の高卒新人を採用。来年度は、フロントマン2名、メカニック4名の採用を目指している。今年も、応募を検討している高校生の会社見学申し込みが多数あり、取材したこの日も1名の申込を受け付けたのだとか。接客・整備・鈑金塗装の経験がまったくない、高校を卒業したばかりの若者を受け入れるため、会社全体で、イチからしっかり教育しなければならないことは覚悟の上だ。正直なところ、このような心構えと体力がある自動車販売・整備事業者は全国でも稀だろう。


◆しっかりとした教育制度の構築

決め手はどこにあるのか尋ねたところ、中神氏は「土台になっているのは、しっかりとした社内の教育制度を構築した点だと思います」と答える。

現在、睦自動車では入社後1ヶ月の新入社員教育があり、配属された後も、OJTだけでなく定期的なフォロー研修を行っている。綿密なカリキュラムを作り込み、一年かけて初歩的な業務を身につけさせる。言い方は良くないが、町のクルマ屋さんの“枠を超えた”取り組みだ。中でも、同社が一番大切にしている点は、社会人としての自覚やモラル構築といったことを最優先していることだ。高校を卒業したばかりの社員に対して、じっくりと時間をかけて育てる覚悟が伝わる方針だ。

実際、入社から一年経つ社員に話を聞くと、「仕事の大切さを知り、社会人としての自覚が持てるようになりました」「自分の行動に責任を持つことの重要性を学べたことが大きい」「自身が成長しているのがわかるのが嬉しい。自分なりの目標を持てるようになりました」といった、ポジティブな言葉しか返ってこなかったのが非常に印象的だった。
その話す姿や、作業をする真剣な横顔は、とても10代の若者には思えないほど大人びて見え、 それぐらい「1年をどう過ごすのか」が人の成長に大きく影響するのだと感じた。




◆大切なのは「働きたい」と思える環境づくり

同社の人材プロジェクトは、もちろん教育だけに留まらない。「若い子が元気に働ける会社づくりを進めています」(中神氏)と言い、教育以外でも、就業規則の見直し、明確な賃金テーブルの策定やキャリアアッププランの提示など、将来を見据えて働ける環境づくりにも積極的だ。また、社員からのヒアリングも欠かさず、常にES(従業員満足度)を意識した会社の在り方を模索し続けている。社内制度の構築を中心としたこれらの活動は、若い人材の確保だけでなく、中堅、ベテランの社員に対しても、着実にステップアップし、より充実した環境で働き続けるための「機会創出」といった意味で一役買っている。実際に、次世代のリーダーを育成するプロジェクトなども並行して進めているという。


結局のところ、若い人材のことだけを考えるのではなく、“時代の流れに合わせて”会社全体の人事制度を見直し、作り直していくことが不可欠ということなのだろう。

「次世代自動車を修理できるのは、次世代の人間というのが、ウチの社長の考え。そのためにも、若い世代は絶対に必要だし、教育も不可欠」と語る中神氏。また、「変化し続けること、去年と違う今年にすることが大切だということもよく言います。それは、中堅やベテランも日々成長していかなければいけないということです」と続けて、話を締めくくった。

クルマを通して地域の活性化に貢献する睦自動車。次の一手に注目したい。
《カーケアプラス編集部》

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