【インタビュー】モータースポーツ部新設の KYB 、世界の舞台でさらなる飛躍を…石川正二部長

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KYB モータースポーツ部 石川正二部長
  • KYB モータースポーツ部 石川正二部長
  • KYB モータースポーツ部 石川正二部長(左)とジャーナリスト 瀬在仁志氏(右)
  • 1980年代初め頃、関西ラリーチャンピオンシリーズ チームモア ナイトラリーの一コマ(右側:ドライバー)
  • KYB モータースポーツ部 石川正二部長
  • KYBのショックアブソーバ「REAL SPORTS DAMPER」
  • KYBのショックアブソーバ「Extage」
  • KYBのショックアブソーバ「LOWFER SPORTS」
  • KYBのショックアブソーバ「NEW SR SPECIAL」
油圧を核に、振動制御/パワー制御技術で国内を代表するメーカーのKYBは、今年4月にモータースポーツ部を設立した。

すでにサスペンションメーカーとしてモータースポーツやクルマ産業に深く関わっている中での新部門設立は、どのような展望と効果があるのだろうか。モータースポーツ部長の石川正二氏に話を伺った。

◆事業部の垣根なくし、一本化へ

----:今回モータースポーツ部を設立した経緯と狙いをお聞かせください。

KYB モータースポーツ部 石川正二部長(以下敬称略):弊社はモータースポーツに50年ほど関わっているのですが、実はモータースポーツ専門の部署というのは無かったのです。4輪だとサスペンション事業、パワーステアリング事業が、2輪だとオートバイ事業が、個々に携わってきました。モータースポーツの現場で、事業単位で深く関わっていながら、横のつながりはあまりなかったんですね。それではもったいないので、事業の壁を取り除いてモータースポーツ部として一本化しよう、ということになりました。

----:KYBはラリーでの活動が有名ですが、これまでのモータースポーツの主な活動について教えてください。

石川:実は1970年代の後半に国内で初めて開催されたF1の日本チームと一緒に参加していましたし、1990年代から2002年まで現在のMotoGPにも参加していました。もちろん多くの自動車メーカーさんや、2輪車メーカーさんとともに多くのモータースポーツ活動を行ってきましたが、景気の動向などによって中断してしまうことも多かったのです。周囲の環境に左右されることなくモータースポーツ活動を続けていくためにも、事業部としてではなく専門部署を設置してモータースポーツに打ち込める環境作りが重要。ということで専門部署を立ち上げました。

もちろんそればかりではありません。御承知の通りモータースポーツは早い速度で進化し続けています。一度中断すると技術的にも環境的にもハードルは高くなってしまいます。KYBというブランド認知力も下がってきてしまうかもしれません。技術力の維持、向上、人財育成。KYBブランドの認知度向上のためにもモータースポーツへの継続的な参加は必要だと考えました。

----:設立によって期待される、具体的な効果は?

石川:モータースポーツ部として動くことで、よりレースサポートが充実しますし、製品開発のスピードアップが期待できます。2輪で培ったサスペンションの技術を4輪へ展開することもできます。2輪のサスペンションに関しては、レース用と市販モデルの関係性も深く、厳しい環境で鍛え上げられた技術を市販モデルに反映しやすくなります。新製品開発にも取り組みやすくなると思います。

----:社内的な位置づけと体制について教えてください。

石川:事業から独立した本社組織となっています。動き易い態勢になっていますからモータースポーツに集中して対応していくことができます。人員は各事業部の技術者、設計者が集められた精鋭部隊となっており、私を除いて12名で構成されています。2~3年のうちに30名ほどの組織にしていきたいと考えております。


結果が求められるモータースポーツの現場ゆえに、技術力の向上はもちろん、人財育成の場としても確かに効果は大きいだろう。2~3年後の人員増には、そんな技術者育成への期待を込めての話に違いない。

◆WRX参戦チームと提携、存在アピール

----:電動パワーステアリングの話がありましたが、あまりよく知られていないのではないでしょうか?

石川:実は、スポーツカーの電動パワーステアリングのシェアはKYBが一番多いのです。世界耐久選手権やIMSAシリーズに参戦するマシンの多くに採用されていますしフォーミュラカーにも採用されています。歴史的には90年代からレーシングコンストラクターの多くとお取引させていただいています。今年の実績で言えばルマン24時間レースでは参加台数の半数が、日本のスーパーフォーミュラはワンメイクですので全車がKYB製の電動パワーステアリングを搭載しています。しかし、KYBのロゴなどは見ることはありません。

----:もったいないですね。技術力の高さを通じて、是非多くの人にKYBを知ってもらいたいですね。

石川:はい、KYBを多くの人に知ってもらうことも、モータースポーツ部の重要課題ですから積極的な活動をすでに行っています。今年6月26日には、世界ラリークロス選手権(WRX)に参戦している「チームEKS」とスポンサー契約をしました。

世界ラリークロス選手権は2014年から開催され、EKSは2017年からアウディスポーツのフルファクトリーサポートチームで、ドライバーは昨年の世界チャンピオンです。同チームには2015年からモータースポーツ用電動パワーステアリングを供給しています。

----:スポンサー契約するにあたり、WRXを選んだ理由はどこにあるのでしょうか?

石川:日本ではまだ認知度は低いと思うのですが、海外では人気のあるモータースポーツで、世界選手権としてすでに多くのファンがいらっしゃいます。今後さらに増えていく可能性が高い、楽しみなカテゴリーです。WRXでチームEKSを通じてKYBを世界に発信していく、良いチャンスだと思っています。またモータースポーツ用電動パワーステアリングの更なる拡販も図っていきたいと思っています。

◆目指すは世界、開発にも注力

----:今後の世界トップカテゴリーへの具体的な取り組みや展望をお聞かせください。

石川:2019年のMotoGPへの復帰を目指しています。現在すでにMoto2に参戦するフランスのチーム「TECH3」にサスペンション供給と技術支援を行っています。17年も引き続き協賛、製品供給、技術支援を行っております。Moto2活動を通じてKYB製品の信頼性や知名度を向上させていくことはもちろん、技術を磨き、世界で通用する人財を育ててMotoGPへのステップを踏んでいきたいと思っています。サポート体制としても欧州活動拠点の設置や、MotoGP経験エンジニアの採用も予定してます。

現在2輪のモータースポーツ活動は、2013年にヤマハ発動機と設立した「KYBモーターサイクルサスペンション(KMS)」に支えられていますが、モータースポーツ部設立に際して、KMSからも技術者が合流し万全の体制を敷いています。

----:4輪に関してはいかがですか?

石川:ニュルブルクリンク24時間耐久レースの知見や電動パワーステアリングの関係を活かし、2020年のWECサスペンション供給を目指しています。2018年にはパートナーとなっていただけるチームを選定していきたいと思っております。また今年度はすでにLMP2クラス全車への電動パワーステアリングの供給と技術支援を行っています。

今後はモータースポーツ部として世界のトップカテゴリーで勝てる製品を開発、チームサポートし、モータースポーツ活動で得た、ノウハウを事業部へ還元し、新製品開発に活かしていきます。


すでにWECでも技術支援の幅は広く、本格参戦への期待は大きい。WRXを世界選手権へのスタート台として、近い将来4輪世界選手権でKYBのロゴを多く見ることになりそうだ。今後のKYBのモータースポーツ活動はもとより、新商品の展開にも大いに注目していきたい。


石川正二:KYBモータースポーツ部・部長。(元)滋賀大学体育会自動車部主将、(元)JAF登録 陵水ラリークラブ代表。

KYBのホームページはこちら
《瀬在仁志》

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