高校生バイク死亡事故、35年以上防げない…“3ない運動”の埼玉県

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埼玉県の高校生バイク事故死者をゼロに抑えることができない。埼玉県は「高校生にバイクは不要」を標榜し、今も3ない運動を展開。禁じる中で不幸な事故は後を絶たない。

埼玉県の高校生のバイク死亡事故は、学校年度の4月~3月の統計でみると、昨年初めて0件を記録した。しかし、これはあくまで発生から24時間以内の警察統計。学校の記録上は昨年9月に1人が亡くなっている。

統計の取り方を変えて暦年でいうと、2013年は0件になるが、この年も年度集計すると1人亡くなっている。警察統計を用いて暦年集計すると、17年13年で死亡事故をゼロに抑えたことになるが、実際はそうではなかった。

埼玉県の二輪車事故は、ここ10年ほどで300件から100件ほどに減少した。それでも死亡事故はゼロにできないままだ。高校生のバイク死亡事故は近年、1~8人の犠牲者を出して推移する。

埼玉県教育委員会のバイクに対する基本方針は「高校生にバイクは不要」。いわゆる“3ない運動”だ。1981年に、免許の取得、バイクの購入、乗車を認めない通達を出して、これが今も続いている。

この通達に沿って各学校は、無断で免許を取得した生徒に対して懲戒処分を行っている。県公立全日制高校の94.4%、私立で80.0%が懲戒処分を実施する厳しい内容だ。懲戒処分は戒告、謹慎、停学、退学の4段階ある。同県教育指導課によると「停学と退学については把握していないが、学校長により適切な処分がなされている」という。それなのに、なぜ死亡事故が起きるのか。

同県は昨年12月に「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」がスタート。それに伴い学校現場で実態調査を実施した。その中にこんな意見があった---。「生徒が無断で免許を取得しているかどうかを正確に把握することが困難である」。

一方で同県は、通学困難者に限り、一定の要件でバイク通学を認めている。彼らは学校の監督や安全な乗り方の講習を受けている。この担当は教育局保健体育課だ。

受講した高校生は、こう語っている。「内容がとても濃かったので、定期的に行ったほうが良いと思いました」、「すごく今後の人生にやくだつことを学べてうれしかった」。

こうしたバイク通学者も、等しくバイク事故を起こし、死亡事故はあるのか。過去に生徒指導課にたずねたことがある。その答えはこうだった。「詳しく調べていないが、おそらくないと思う」(前同)。

3ない運動を展開する教育指導の限界はここにあるのではないか。

《中島みなみ》

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