【CareTEX2017】海外からも注目、宇賀神溶接の手こぎ3輪自転車…社長が語る開発秘話

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宇賀神溶接工業所の手こぎ3輪自転車「ハンドバイクジャパン」
  • 宇賀神溶接工業所の手こぎ3輪自転車「ハンドバイクジャパン」
  • 宇賀神溶接工業所の手こぎ3輪自転車「ハンドバイクジャパン」
  • 宇賀神溶接工業所のブースに飾ってあった手こぎ3輪自転車についてのパネル
  • 宇賀神溶接工業所のブースに飾ってあった手こぎ3輪自転車についてのパネル

埼玉県朝霞市の中小企業、宇賀神溶接工業所は「CareTEX2017」にユニークな自転車を展示した。それは手でこぐ3輪車で、名前は「ハンドバイクジャパン」。2代目の宇賀神一弘社長によると、その開発の裏にはさまざまなエピソードがあったという。

同社は食品加工機械など金属部品を溶接する会社で、特にミリ単位で仕上げる精密板金溶接加工には定評がある。しかも、宇賀神社長はステンレスの可能性を広げるためにさまざまなアート作品を製作している。

そんな同社のホームページを見た人からある依頼が舞い込む。「自分用に手でこぐ3輪自転車をつくってほしい」。その人は事故で下半身が不自由になり、それでも自転車に乗りたいということだった。

しかし、宇賀神社長は自転車をつくったことがないので断った。すると相手に「ホームページに載っている製品のようにパイプを曲げる技術があれば、自転車はつくれるはず」と切り替えされてしまった。

「それで引き受けることになったのですが、自転車で知っている部品と言えばサドルとペダルぐらいなので一から勉強しました」と宇賀神社長は振り返る。そして、欧米で身体障害者の競技用に使われている3輪自転車について知り、知人の工業デザイナー、柴田映司氏と二人三脚で自転車の製作に取りかかった。

「せっかくつくるのなら福祉機器には見えないデザイン、一般の人にも乗れる新しい自転車にしようと考えました」と柴田氏は話す。

しかし、完成するまでには丸1年かかった。その間、宇賀神社長や柴田氏は依頼主の元を何度も訪れ、詳細を詰めていったという。もちろん、できあがった3輪自転車を見て依頼主が喜んだのは言うまでもない。

以来5年、毎年のように改良を重ね、バージョンアップさせている。「今回展示したものは、福祉施設やリハビリ施設向けです。部品点数も少なくしたシンプルなつくりにして、街中の自転車店でも直せるようにしました。同時に部品の共通化を進めてコストダウンを図っています。材料は3種類の素材しか使っていません」と宇賀神社長は説明する。

ただ、1台1台手づくりのため、価格は40万円ほどだ。電動アシスト化も可能で、その場合は約10万円高くなる。最近は電動アシスト化するお客が増えているという。同時に健常者の割合も増え、現在は30%ほどになっている。

「会社へのメールでの問い合わせなども増え、うち7割が海外からのものです」と宇賀神社長は話し、その状況に驚いている。ただ、まだ海外への販売は行っていないとのこと。しかし、これだけ海外からの反響が多いと、何らかの手を打っていく必要がありそうだ。

《山田清志》

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