東京メトロで起きた列車のベビーカー引きずり事故を重く見た国土交通省は、緊急鉄道保安連絡会議を開催。当事者の東京メトロに加えて、JR、大手民鉄、地方自治体交通局など約36団体の担当者を集め、各社の取組みなどの意見交換を行った。
冒頭であいさつに立った藤田耕三鉄道局長は「鉄道事業全体の共通の課題として、必要な情報共有と意見交換することが、鉄道全体の安全性の向上、同種事案の再発防止の観点から有効だと考えている」と、会議の狙いを語った。
4日に半蔵門線九段下駅で起きたベビーカー引きずり事故は、単独乗務19日目の車掌が、6両目のドアにベビーカーを挟んだことを見落として出発合図を送ったこと。さらに非常通報ブザーで乗客から異常の知らせを受け、その後のホーム上の非常停止合図器の鳴動も知っていたが、列車を止めずに次の神保町駅まで走らせてしまった。これが「負傷者はなかったが、一歩間違えれば大きな事故につながりかねない事案だった」(藤田鉄道局長)とされた。
地下鉄など列車のドアには、何かをドアにはさみ込んでも検知されない「すき間」がある。列車の運行を円滑に運ぶための遊びの部分だが、運行に影響を与えない状態で検知できる技術開発を、東京メトロは目指している。
連絡会議では、車掌が異常信号に気づきながら停止させることを躊躇しているヒューマン・エラーの防止に関心が集まった。車掌は非常停止の経験がなく、警報装置が作動したときの措置について研修は受けているが、実際に列車を止めるという研修は、同社にはなかった。今後、同社は実車を使った研修も行うとした。
開催した鉄道局では「(鉄道事業者が)新たな研修方法の着眼点を見つけたいという意識は高かった」と、開催の意義を語っている。