【オートモーティブワールド16】「ディープラーニングが自動運転にもたらす進化と未来」…エヌビディア馬路徹氏インタビュー

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NVIDIA シニアソリューションアーキテクト馬路徹氏
  • NVIDIA シニアソリューションアーキテクト馬路徹氏
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  • ディープ・ニューラル・ネットのイメージ
  • ニューラル・ネットを活用したディープラーニングのイメージ
  • NVIDIA GPUを活用したスーパーコンピュータにより学習を重ねる
  • GPUの進化
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ゲーム用グラフィクスプロセッサーを手がける米エヌビディア(NVIDIA)は、現在もゲーム用が収益の半分を占めるものの、車載用も主要領域のひとつと位置づけ、中でもGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を用いた自動運転向けソリューションに注力している。

エヌビディアの日本法人でシニアソリューションアーキテクトを務める馬路徹氏は「自動運転向けソリューションでGPUを使っているのはエヌビディアしかない」とした上で、「しかも我々の強みはスーパーコンピューター用のチップと車載用チップのアーキテクチャーを共通化しており、これによりスーパーコンピューター用に造ったソフトを車載用でも走らせることができる」と強調する。

さらに馬路氏は「自動運転システムは障害物や道路上の白線などを検知する『センシング』、そこから得た情報と固定道路地図を組み合わせてローカルダイナミックマップを常に更新する『地図モジュール』、前方で起きたことに対してどう避けるかといった人の大脳がやるような判断を行う『人工知能モジュール』、センシングや地図モジュールからの情報や人工知能からの修正指示を受けて実際に動力やブレーキ、操舵の『制御モジュール』、さらに『HMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)』の5つで構成され、制御モジュール以外は我々の『DRIVE PX』の超並列計算、ディープラーニング、および『DRIVE CX』によるコンピュータービジョンで実現することができる」と語る。

このうちDRIVE PXは2015年にリリースされた高性能GPU『Tegra X1』2個で構成され、その性能は「1秒間に90枚の画像を認識でき、しかも誤差率は5%を完全に切っている。5%の誤差というのは認識力が極めて高い人のレベルで、いわばスピードも精度でも人間を超えている」という。

さらに「実際に、ラスベガスの市街地での走行に用いたところ、乗用車、SUV、大型トラックすべて同時に認識できた。学習さえすればそれが全部統合的に認識できる。しかもプラスアルファとしてはスクールバスや緊急車両といった属性もわかる。これは実に大切で、アメリカではスクールバスの赤いランプが点滅すると生徒たちが降りてくるので、後続車はもちろん対向車といえども止まらなくてはいけない。自動運転で任せっきりにするにはそこまで認識しないといけないので、いわば必須の技術になる」とも。

またTegra X1は「スーパーコンピューターに使われているGPU『Tesla』の一番小さい単位を車載用チップとして活用している。言い換えるとスーパーコンピューター用のチップと車載用のチップのアーキテクチャーを共通化している。これにより車載用のチップでは数か月単位でかかってしまう学習も、スーパーコンピューターにそれをやらせて学習した結果だけを車載用に落とすことができる。また学習し損ねたサンプルも、スーパーコンピューターで再度学習させ、その結果を再び車載用に落とすというループもつくることができる」と解説。

馬路氏によると「アウディの自動駐車システムにはTegraが使われており、それもひとつのチップでできるようになっている」という。

一方、HMIモジュールについて馬路氏は「極めて重要な役割を担う」とみる。というのも「自動走行があらゆる場所でできるわけでなく、例えば首都高など限定された場所からまず始まっていくだろう。そうした場合、自動走行できる場所から抜ける時にドライバーに再びハンドルを握るよう知らせることが必要になる。その際、ドライバーが居眠りをしていればそれを検出し、しかるべき処置をとらざるを得ない事態も想定される」からだ。

また「自動走行中も周りの状況を事細かに知らせる必要もある。エヌビディアでは自動走行車用ではないが、すでに非常にレベルの高いグラフィックスを出している。周りの走行状態を見せるにはメーター上に出すことになるが、そこには地図やナビを出せるくらいの能力がないと使い物にならない。『アウディTT』で製品化したものでは実際の画像を出せるようになっている」と話す。

エヌビディアの自動走行車用HMIモジュールに使われているDRIVE CXもTegra X1によって自然言語認識、高性能・高品質のグラフィックスインタフェースを実現しているという。

人工知能モジュールに関して馬路氏は「自動運転の質を決めるところになる」とした上で、「AIモジュールも、もともとディープラーニングで人工知能をやっているのでエヌビディアの強みが発揮できる」と自信を示した。

エヌビディアは2016年1月9日から米ラスベガスで開催されるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で、自動運転に関する新たなソリューションを公表する方針で、ハード、ソフト、開発環境を含めてのアップデートがあるという。この内容に関しては1月13日に東京ビッグサイトで開幕する自動車次世代技術専門展「オートモーティブワールド2016」専門技術セミナー『AIは自動運転を革新させるか』の中で14日、『ディープラーニングが自動運転にもたらす進化と未来』と題した講演で馬路氏が解説する予定。事前申込が必要となる。

《小松哲也》

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