【土井正己のMove the World】環境か経済か、「COP21」開催…プリウスはこうして生まれた

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COP21
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  • 1997年に登場した初代プリウス
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  • 歴代トヨタプリウス。左から2代目、初代、3代目(現行型)
今週からパリで「COP21」が始まった。正式には、「国連気候変動枠組み条約締結国会議」という。産業革命以降の平均気温が「プラス2度」を超えないよう、各国が温室効果ガスの排出を減らす合意を目指す会議である。

「プラス2度」を超えると北極の氷が解け、海面が上昇して、小さな島などはなくなったり、水害が多発するようになるということから「プラス2度」が重要なラインとなっている。今回は、米国も中国も、首脳が積極的な参加意欲を見せているのが特徴的である。この会議の第3回(COP3)は、1997年に京都で開催され、その合意は「京都議定書」として世界に知られている。しかし、その時は、中国は初めから参加しておらず、米国は参加の意を表明していながら国内の反対に会い、途中で離脱している。中国の不参加や米国の離脱の理由は明確だ。「温暖化対策はカネがかかり、経済にマイナス」だからである。


◆「環境も経済も」を目指す

この「環境か、経済か、どちらを優先するか」の議論は、さらに1992年に遡る。一般には“ブラジル地球サミット“として知られる「国連環境開発会議」だ。先進国は「性能の悪い工場やクルマで地球を汚すのは発展途上国」と環境優先を主張し、これからの豊かな社会を夢見る途上国は「ここまで地球を汚したのは先進国。自分たちはこれから成長したい」と経済優先を主張した。

この平行線の議論を終息させたのが、「持続的成長(サステイナビリティ)」というワードである。すなわち、「環境か経済か」ではなく、「環境も経済も」の両立を目指すという意味である。自動車産業に携わるものとしては、それまで悪者扱いされていたのが、正当化された瞬間でもあり、大変嬉しくなったのを思い出す。しかし、「環境も経済も」というのは、理想としては素晴らしいが、実際にはどうなのかという疑問も同時にあった。


◆プリウスはこうして生まれた

トヨタは、その疑問に応えなければいけないと思ったのだろう。時を同じくして、「G21」という社内プロジェクトがスタートした。「21世紀にどんなクルマが必要か。20世紀中にそれを提案しよう」というプロジェクトである。「環境も経済も」を実現させるクルマは果たして何なのか。社内で何度も議論された結果、「消費エネルギーを半分にするクルマ(燃費性能が2倍)」が開発目標となり、このプロジェクトのリーダーを務めた内山田竹志主査(現会長)は、それを実現するには「ハイブリッドしかない」という結論を出したという。1999年の発売に向け開発がスタートされたが、経営トップからの指示で「2年早出し」を命じられたと聞く。こうして、『プリウス』が世の中に出てきたのは、1997年12月だった。国内の広告では「21世紀に間に合いました」というキャッチコピーだった。

現在では、トヨタ、ホンダはもちろんのこと日本車においてはハイブリッドが常識となってきている。これらは、バッテリーやモーターなどの新たな産業群を生み出し、クルマとして世界に輸出されていることから経済にも大きく貢献してきた。まさに「環境も経済も」が実現してきている。また、輸入国においても、自動車の普及と環境をバランスさせることができる。


◆原油価格に右往左往のアメリカ

米国はどうであろう。昨今は、経済の回復と原油価格が下落で、大型SUVが飛ぶように売れている。テスラのEVはあるが、ニッチマーケットでの話だ。かつて、オバマ大統領が登場した頃には「グリーン・ニューディール」と銘打って、環境産業を育成するプログラムを大々的に立ち上げたが、シェールオイルの登場と共に原油価格が下落し、こうした環境産業は姿を消していった。米国では、常に「環境技術は、原油価格に支配されている」という歴史がある。今回、オバマ大統領は、「COP21」に積極姿勢を示しているが、果たして国内の支持をえられるのかどうか。また、大統領選で共和党が勝つと風向きも変わってくるであろう。

中国は、自国の環境問題(特に汚染問題)が深刻になってきていることから、先進国から環境技術支援を得たいというのが本音であろう。よって、「COP21」に参加して、いかにして技術支援を獲得できるかということが交渉の基本になると思える。


◆4代目プリウス、そして、その次

偶然ではあるが、日本では「COP21」の最中に4代目プリウスが発売される。初代から見れば環境性能は数倍向上している。この「COP21」の枠組みは、日本にとって、「環境も経済も」の成功実例を世界に見せていく絶好の機会だと思う。政府の規制の在り方、その規制をクリアーすべく開発される技術、その技術のお陰で発達する新たな産業群。こうした「環境も経済も」の好循環は、日本の経済を大飛躍させることはなかったが、「サステイナブル」な成長に乗せることが出来た。

今回の「COP21」で新たな枠組みができれば、その枠組みの先頭に立ち、再び新たなイノベーションを起こすことにチャレンジして欲しい。そして、その技術を世界に紹介する時には、「2020年のオリンピックに間に合いました」というフレーズを期待したい。


<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームである「クレアブ」副社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。
《土井 正己》

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