【K-TAI 2015】小さくてもフォーミュラー! カートで7時間、ドタバタ参戦記

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2015もてぎKART耐久フェスティバル“K-TAI”
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国際格式の広大なサーキットをレーシングカートで走ると

アクセル全開。ストレートがひどく長い。ダダダダ! と、背中で力強く吠えるホンダの汎用エンジンGX270は、すでに回りきっている。それでもまだストレートの真ん中。このマシンの最高速にすでに達しているはずだ。聞けば、このコースでは、最高速度が時速140kmにも達するマシンがあるという。足も手も全身をむき出しにしたレーシングカートで、これほどの高い速度は、まったく初体験であった。路面に張り付くように体勢は低く、路面も近い。体感速度は、窓や屋根のある乗用車とは異次元までに高い。

2015年8月29日、30日にわたって開催された「2015もてぎKART耐久フェスティバル“K-TAI”」に、縁があって初めて参戦することができた。チームは、メディア関係者が中心になる「クラブレーシング」だ。

通称“K-TAI”と呼ばれるこの耐久イベントは、栃木県のツインリンクもてぎサーキットが主催するもの。1周4.8kmの国際格式の本格サーキットをレーシングカートで走る。しかも、上級のチャレンジクラスで5時間、エンジン無改造のエンジョイクラスでは7時間もの長丁場。他にないということもあり、参戦希望者が殺到し、エンジョイクラスでは毎回100ものチームがエントリーする。今年の参戦は95チームを数える。95台もの多くのカートがコースを埋め尽くす風景はまさに圧巻である。

参戦にあたりドライバーが用意しなければならないのは、ヘルメット(JIS2種/スネル規格)、レーシングスーツ(公認カート用)、レーシングシューズ、レーシンググローブ、リブプロテクター(あばらなどをカードするプロテクター)だ。首を守るネックガードもあった方がいい。カートやJAFのライセンスがなくても公式練習に参加すれば参加資格は得られる。10歳から参戦可能だ。子どもは体重が軽いため、カートでは有利。そのためレギュレーション上、子どものいるチームは、いくつかの不利なルールが用意されている。

初めてのK-TAI参戦ということで、8月上旬に開催された練習会に参加した。そこで驚いたのは、アベレージスピードの高さだ。レーシングカートは何度も経験している。普通、エンジンが吹けきるのは、ストレートエンドの一瞬だけで、忙しく加減速やコーナーリングを繰り返すのがレーシングカートだと思っていた。

しかし、ツインリンクもてぎサーキット本コースは違う。延々とアクセル全開。しかも、コースが広いこともあり、コーナリングスピードもとんでもなく速い。これほど速いコーナリングスピードを体験するのも始めて。「ああ、これがモータースポーツ専門のフォーミュラーというものか!」と、改めて教えられた気分だ。

◆途中で降り出した雨がやまず、スリッピーな雨に四苦八苦

本コースを走るレーシングカートの驚くべき速さにどぎまぎしつつ、8月30日の本戦を迎えた。スタートの朝の天候は曇り。朝方に降った雨のため、路面はじんわりと濡れている。これくらいなら数周走れば、コースラインは乾くはず。との狙いで、ドライタイヤでグリッドに並ぶ。ところが見れば回りはレインタイヤばかり。そこで「ギャンブルするより確実に行こう」と、スタート直前のグリッド上でタイヤをレイン用に交換。大忙しのスタートとなったのだ。

我がチーム最初のドライバーは津々見友彦氏。第1回日本グランプリにも参戦した大ベテランだ。他は、同業のモータージャーナリストの片岡英明氏、ホンダの香川信氏。そこに自分も含めて4人のドライバーで7時間を走る。抽選で決まったスタートのグリッドは45番手。ちょうど真ん中だ。

朝9時30分にローリングでレースはスタート。レース直後の混乱も、ベテランの津々見氏は難なくクリア。30分ほどの走行で、2番手の片岡氏にステアリングを譲る。天候ももっているし、路面も乾いてきたということで、第3走者である筆者へのドライバーチェンジ時に、タイヤをレイン用からドライ用に変更。

さあ自分の番だ! と飛び出てみれば、なんと雨が強くなってきた。わずか数周の間に、スピンやコースアウトするマシンが続発。セーフティーカーが導入されることになった。もちろんチームは、またもやタイヤをレイン用に交換。ドライ用、レイン用、ドライ用、レイン用というメカニック泣かせの展開となったのだ。

その後も雨あしは強くなったり弱くなったりしながらの進行。午後に担当した自分の走行では、完全なウェット路面だった。ただし、レイン用のタイヤはそんな状況でも、確かなグリップ力を発揮。横浜ゴムのレーシングカート用のレインタイヤの性能の高さを実感することができた。

チームは、ガス欠あり、コースアウトあり、黄旗無視のペナルティありという、バタバタの展開に。当初は、全体の真ん中の順位を走っていたものの、ズルズルと降格。大きなトラブルはなかったものの、7時間の走行が終わってみれば、107周を周回し19位/実質71位(K-TAIの場合、同一周回は同一順位となるため)。あまり誇れる順位ではなかったが、誰もケガすることなく完走できたことは、当初のチームの目標通りだ。また、ドライバーだけでなく、メカニックやマネージングスタッフ、食事やマッサージなどのサポートスタッフの努力もあり、ドライバーとして、これほど優遇されての参戦もなかなかないだろうということを実感出来るイベントとなった。チームに感謝したいと思う。

それにしても常々思うのは、モータースポーツは見るよりも自身が体験する方が楽しい、ということ。そして、実際に参加することで、「観るモータースポーツ」がさらに楽しくなる。子どものころに草野球や草サッカーを体験しているからこそ、プロの野球やサッカー選手のすごさが理解できるのと同じだ。

自動車産業が盛んな日本だからこそ、モータースポーツの人気が野球やサッカーと肩を並べるほどになってほしいと思う。そのためにも、一人でも多くの人がモータースポーツに触れてくれればと願うばかりだ。

《鈴木ケンイチ》

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