【航空宇宙支援でファンド】
モノづくりを産業の基盤とする中部地域は全国でも景気回復が顕著だ。2014年末にリニア中央新幹線が着工し、今秋には三菱航空機(愛知県豊山町)が小型旅客機「MRJ」の初飛行を予定。これからの日本経済をけん引するであろうビッグプロジェクトもめじろ押しだ。旧東海銀行が母体の一つで、中部経済界に強い影響力を持つ三菱東京UFJ銀行中部駐在の小笠原剛副頭取に、この地域の景況感や地方創生への考えなどを聞いた。
―中部の景況をどう見ていますか。
「全般的にこの地域の景気はいい方向に向かっている。就任した3年前と比較すると、景況は格段に変わった。当時は円が1ドル=75円ぐらいだったが、円安となり、輸出企業が多いこの地域にとっては非常によい環境になった。政府の補助金や投資減税などの効果もあった。米国の景気がずっと良かったのも下支えしている」
―資金需要動向は。
「大企業、中堅企業へと広がり、今は中小企業にもニーズが出てきた。中部4県の中小企業向け貸出残高は3月から前年同月比プラスになった。また、4県の貸出残高は5月に前年同月より4000億円増えた。資金需要は底を打った感がある」
―ただ、市中金利は低迷しています。
「金利は非常に厳しく、利ざやはとれない。いかに手数料でカバーするかだ。14年度はビジネスマッチングを約4500件実施した。この地域はオーナー系の企業が多いので事業承継も約1300件の相談を受けている。海外進出の相談も約700件手がけた」
―メガバンクとして「地方創生」にどう取り組みますか。
「リニア開業に向けた名古屋駅の再開発など、資金供給やコンサルティングで関わっている街づくりプロジェクトが14件、約5000億円分ある。コンサル機能を提供できるのがメガバンクの利点。また、この地域は航空宇宙分野を特区に認定し、育成している。こうした動きを支援するため6月に3000億円を上限としたファンド『成長基盤強化融資プログラム』を設定した。航空宇宙などの成長分野に低利で融資する仕組みで、小口融資がしやすくなる」
【記者の目/地方創生にメガバンクの知見】
三菱東京UFJ銀はメガバンクでありながら中部地域では地域に密接している。巨大な事業規模を地域の課題解決に生かせる特殊な立場だ。リニアや航空宇宙に絡む事業はその力が存分に生かせる格好の分野。これらのビッグプロジェクトを地方創生に生かす提案が期待される。
(江刈内雅史)