【タイ】タイ軍事政権の主要閣僚が、民政移管の総選挙が2016年にずれ込むという見通しを相次いで示した。
プラユット首相(前タイ陸軍司令官)が国民と国際社会に示した民政移管の行程表は2015年後半の総選挙をうたっていた。欧米諸国はできるだけ早期に総選挙を行うべきとしており、軍政の動きは反発を招きそうだ。
11月26日に放送された英BBC放送のインタビューで、ソムマイ財務相(元財務副次官)が「個人的な感触」とした上で、総選挙が当初予定より半年程度遅れるという見通しを示した。
翌27日には、プラユット首相の元上官であるプラウィット副首相兼国防相(元タイ陸軍司令官)が、軍政に反対する動きがあることを理由に、総選挙は2016年になると思うと話した。
29日には、新憲法制定や政治制度改革の司令塔であるウィサヌ副首相(元内閣秘書官長)が、憲法制定と関連法の整備にかかる時間からみて、総選挙は2016年2月になるという見通しを示した。
ウィサヌ副首相の発言を伝えたタイ字紙タイラット(インターネット版)の記事に対する読者の反応は「好き」18%、「嫌い」77・7%だった。
タイでは昨年10月から、タクシン元首相派政権打倒を目指す反タクシン派市民のデモがバンコクなどで拡大。今年1、2月には数万人がバンコクの主要交差点を長期間占拠した。軍は治安回復を理由に、5月に戒厳令を発令、クーデターでタクシン派政権を倒し、全権を掌握した。
軍政の強権発動で、タクシン派と反タクシン派の衝突は収まり、市民生活は平穏を取り戻した。しかし、クーデターから半年経っても、両派の和解に向けた政治社会改革の道筋は見えていない。一方で、戒厳令による政治活動の禁止、報道統制、不敬罪による投獄などが続き、学生やメディア関係者の間で軍への反感が徐々に高まっている。
経済の見通しも不透明だ。7―9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比0・6%増、前期比(季節調整済み)1・1%増と低迷した。待たれるのは景気刺激策やインフラ整備、汚職対策などだが、軍政の具体的な動きは乏しい。