【フォード フィエスタ 試乗】“まずはエンジンありき”、見い出せたバイクとの共通点…二輪ジャーナリスト 和歌山利宏

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フォード・フィエスタ
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モーターサイクルジャーナリストの私が『フィエスタ』に試乗して印象的だったことは、クルマにもバイクと同様のトレンドが見出せたことである。

一つは、メーカー組織だけでなく、製品としてのグローバル化だ。バイクの車輌キャラはその国籍の国民性と土壌が反映され、また、そうあるべきだと思うが、ベーシックモデルではそうもいかない。日常性の高いものへの要求は、もはや世界中どこでも大差なく、共通の仕様を大量生産して価格を下げ、世界の生産拠点を有効に生かし、送り出されることになる。

もっとも、20世紀初頭にアメリカで生まれたフォードは、創業間もなく欧州に進出しているのだから、グローバル化で他を牽引してきたと言って差し支えない。このフィエスタも、世界戦略車であることに疑いの余地はない。実際に乗っても、少なくともアメ車と呼ばれる類ではなく、欧州車のようであり、もし日本車と聞かされたら、門外漢の私は信じるかもしれない。いい意味での繊細ささえ感じるのだ。

そうなると、ちょっと残念なのが、シート座面の前後長。これが短いと快適性やサポート性に欠けるだろうが、身長161cmの私が腰をシートバックに密着させると、ふくらはぎの膝下が座面前端部に当たってしまう。グローバル仕様では、小柄な日本人にこの寸法が大きいようだ。骨格的に骨盤が後傾気味の日本人は、骨盤を後傾させ、腰とシートバックに隙間を開けて座る人が多く、この問題は顕在化しないのだろうが、操縦するための正しい姿勢で乗りたい小柄な女性には、別体ランバーサポートの使用をお勧めしたいところだ。

エンジンに関しても、バイクに通じるものがある。バイクでは、675~900ccクラスのロードスポーツに国内外の3メーカーが3気筒を投入、理想形の一つとして認知されつつある。4気筒よりもスリムで、性能的にも2気筒のトルク感と4気筒の伸び感を両立しているからだ。4輪車では、少々事情が違い、1200cc以下であれば、気筒数を減らすことで、燃焼室の総表面積を小さくでき、熱エネルギーの損失を抑えて省燃費化を図りやすいことが多分にあると思う。また、ピストン、コンロッド、吸排気バルブ回り、燃焼噴射装置の一部の部品点数を削減でき、低価格化にも有利となろう。

ボンネットを開け、エンジンを見て驚いたのだが、フィエスタの3気筒は、675ccのバイク用ユニットよりシリンダピッチが狭く、幅小である。実際、かなりのロングストロークで、ボアが小さいのだ。3気筒エンジンは、ピストンの上下動による慣性力はお互いに打ち消されても、発生源にズレがあるため、エンジンを揺するような偶力振動が発生。これは幅小化で発生源のズレを小さくし、振動の元を断つ設計だ。だから、このエンジンには、エンジンの小型化を阻害し、フリクションロス増大にも繋がるバランサー軸は設けられない。クランク軸両端のフライホイールとプーリーにウェイトを非対称に設けるが、それは偶力を完全に打ち消すのではなく、偶力を好都合な方向に集中させるためのものである。

ともかく、不快な振動はない。中高回転域では細かなエンジンの動きを感じないでもないが、それは内燃機関の存在が伝わってくるようで、私は嫌いではない。そして、この3気筒ユニットとDCT(デュアルクラッチトランスミッション)との相性が、抜群だ。DCTは、奇数段と偶数段のギヤがそれぞれのクラッチを持ち、交互に入れ換えながら増減速していくオートマッチックシステムで、電子制御のモード変更で、マニュアル変速も可能。有段変速である上に、一般的なオートマにないダイレクト感が魅力で、バイクにも採用されている。

このエンジンは、低回転域、低開度域から過給効果が生じ、新気充填の高まりを実感できる。それにしても、微小なスロットル操作にもリニアで、糸を引くよう忠実な反応は、気持ちいい。DCTと相まってコントロール性も素晴らしいのである。おかげで、高速道路を車列を連ねて巡航していても、速度調整にストレスがなく、一クラス上の快適さすらある。さらに、コーナーでのラインのコントロール性も秀逸である。加減速が意に忠実だからだ。バイクの世界では「まずはエンジンありき」という名言があるが、フィエスタにもこの言葉は当てはまりそうである。

もちろん、こうした良さには、絶妙の車体チューニングも貢献している。乗り心地はコンパクトカーと思えない良さで、路面からの突き上げられても、その直後に細かい振動やノイズが車内に残ることもない。コーナーを曲がるときは、前輪の接地感とともに回頭性を高めていく。これはバイクに求められる大切なことでもある。それでいて、そのことを意識するや、オーバーステア感は消え、リヤの接地性が破綻を来たす素振りさえ感じさせない。

フィエスタは、日常生活において活動的に移動するためのクルマである。安楽感も攻撃性もないほうがいいが、これにはバケット上のシートが身体を優しくサポートしてくれることが伊達でない快適性とスポーツ性が程好く備わっており、そのことが大きな魅力になっている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★


和歌山利宏|二輪ジャーナリスト
1954年生まれ、1975年にヤマハ発動機に入社し、様々なロードスポーツバイクの開発に携わり、テストライダーも務める。また、自らレース活動も行ない、鈴鹿8耐第5回大会では4位入賞の成績を持つ。現在は二輪ジャーナリストとして執筆活動、ライディングインストラクターなど多方面で活躍中。
《和歌山 利宏》

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