英国の首都ロンドン周辺の鉄道路線網を運行する新たな列車運行会社「ゴヴィア・テムズリンク・レールウェイ(Govia Thameslink Railway)」がこのほど営業を開始した。来夏には親会社が同一の他路線も統合し、英最大の列車運行会社となる。
英国の全国鉄道ネットワーク(旧国鉄)は上下分離によって民営化されており、インフラは公営企業のネットワーク・レールが保有し、列車の運行は地域や路線網ごとに民間企業が行う制度(フランチャイズ制)が導入されている。運行会社はサービスの内容などを定めた競争入札によって決められ、一定期間の運営権が与えられる。
今回、新たに営業を開始したゴヴィア・テムズリンクは、英各地でバスや列車を運行するゴー・アヘッド・グループ(Go-Ahead Group)と、フランス国鉄(SNCF)系列の交通オペレーターであるケオリス(Keolis)の合弁企業・ゴヴィア(Govia)が設立した運行会社。これまでバス・鉄道オペレーター大手のファーストグループによる「ファースト・キャピタルコネクト」が運営していた路線網を引き継ぎ、9月14日から営業を開始した。
同社が営業を引き継いだのは、ロンドンを南北に貫く「テムズリンク」と、ロンドン・キングスクロス駅、ムーアゲイト駅から北部に向かう「グレートノーザン」路線網の計200km超。来夏には、同じゴヴィア系列のサザン(Southern)と、空港連絡列車を運行するガトウィック・エクスプレス(Gatwick Express)を統合し、英国の鉄道旅客輸送量の22%を担う英最大の列車運行会社になるという。英運輸省によると、同社の契約期間は7年となっている。
英国の鉄道は1990年代の民営化当初は事故が相次いだものの、インフラ運営をネットワーク・レールが担うようになった2000年代からは比較的安定し、近年は旅客輸送量も鉄道黄金期の1920年代と並ぶまでに増加した。しかし、2009年には主要幹線の一つである東海岸線の長距離列車を運行していた会社が経営難により契約期間の途中で撤退し、国が運営を引き継ぐケースが発生するなど、様々な問題点も指摘されている。