発表直前、iPhone 6をめぐる情報リークの顛末まとめ

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2014年第2四半期 国内スマートフォン出荷台数 ベンダー別シェア(IDC Japan株式会社/2014年9月2日発表)
  • 2014年第2四半期 国内スマートフォン出荷台数 ベンダー別シェア(IDC Japan株式会社/2014年9月2日発表)
  • iPhone 5以降のLTE対応表。ピンク色の部分が当該iPhoneで利用できるLTE周波数帯である。次期iPhoneはさらに対応周波数帯が広がると予測
  • 木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
 米アップル(Apple)は9日(日本時間では10日未明)、次期iPhoneの製品発表会を予定しており、すでにネット上では次期iPhoneに関する様々な流出情報や予測をめぐる噂話で盛り上がっている。

 米調査会社Strategy Analyticsが発表した2014年第2四半期(4~6月)の世界スマートフォン出荷台数に関する調査では、1位のサムスン(7,450万台)に次いでアップル(3,520万台)が2位と、依然として大きなシェアを占めているのだが、他のメーカーが様々なバリエーションのスマホ端末のラインナップを揃えた上でのシェアに対し、アップルは実質1モデル(昨年のモデルからiPhone 5s/5cと2バリエーションが並ぶようになったが)で他のメーカーに対して勝負に挑んでいるからこそ、毎年このiPhoneの新製品発表には大きな注目が集まるのである。

 ちなみに昨年は米国で9月10日(火)にiPhone 5s/5cが発表され、翌週の9月20日(金)より発売が開始された。このパターンからすると、今年は米国で9月9日(火)に発表会が開催されたのち、おそらく9月19日(金)から発売が開始されるという流れになるのだろう。

 その発表会が迫っているが、現時点でネット上で信憑性のある噂にスポットを当て、次期iPhoneを予測してみたい。


■サイズや形状は?

 こうした発売前の新製品に関する情報は、やはり端末の製造を請け負っている中国が流出源となることが多いようだ。

 次期iPhoneの発売が近づくにつれ、様々な情報のリークが増えているほか、おそらくうっかりミスとも思われる製品情報がWebに流れる事故なども発生しているようだ。中国最大の通信事業者 China Telecom は、うっかり「iPhone 6」の予約ページをフライングで公開してしまい、世界中で話題となったようだ。すでにそのページは閉じられているが、掲載されていた内容によるとiPhone 5sと同様の3色のラインアップが分かる写真と、主要スペックも記載されていた。それによれば、ディスプレイサイズは4.7インチ416ppi液晶を装備、A8チップ、Touch ID、そして2100mAhバッテリーが搭載されるようだ。また、同様に中国の通信事業者 China Unicom からはiPhone 6の価格表と思われるものが流出し、4.7インチのモデルと、5.5インチのモデルの2ラインアップとなることが明らかになった。以前から2サイズのモデルがラインアップされることは様々なところで噂になっていたが、通信事業者からの情報流出ということで信憑性も高く、これで2ラインアップが存在することを裏付けた形だ。この China Unicom の流出情報によれば、4.7インチのモデルは「iPhone 6 Air」と命名されており、さらに5.5インチのほうは「iPhone 6 Pro」となっていた。

 本連載の第54回で、すでに8月上旬から中国のブラックマーケットではiPhone 6の模倣品が販売されていることを報じたが、この模倣品自体がすでに完璧に近いところまで次期iPhopneの外装デザインやディスプレイサイズなどを踏襲していたようだ。およそ4.7インチのディスプレイを備えたこの端末は、従来までのiPhoneよりも一回り大きいサイズとなる。スマホディスプレイの大型化が進んでいるが、ついにアップルも今後は4.7インチクラスを主力のサイズとしていくということなのだろう。

 これまでアップルは、iPhoneの理想的なサイズとして3.5インチ(iPhone4S以前)~4インチ(iPhone 5、5s/5c)、端末幅58.6mmというところにこだわってきた。握りやすく、また片手で操作した際に親指が主要なアプリアイコンに届くなどの使い勝手を最重視してきたからだ。しかし4.7インチともなると端末幅も大きくなるし、ディスプレイ上のアプリを操作する際も端末を握り直したり両手で操作するようなことになる。ディスプレイの大型化はトレンドとしても、iPhoneが大型化することは、これまで一貫してきたアップルの思想にやや反するような気がしてならない。当面、現行のiPhone 5s/5cも継続販売されることになろうから、アップルはそれにより「3サイズの端末を選択できる」というふうに言い逃れるのだろうか。

 端末の内蔵メモリは16/64/128GBになるとか、従来どおりの16/32/64GBであるとか、まだまだ情報は錯綜中である。またNFCが搭載されるという噂もある。


■一番気になるのがLTEの対応バンド

 次期iPhoneで多くのユーザーが知りたがっていることは、日本の通信事業者が展開するLTEバンドにどこまで対応するかという点だ。かつて800MHz帯や1.5GHz帯を中心にLTEエリアを整備していたKDDIにとって、2GHz帯のLTEにしか対応しなかったiPhone 5は大きな痛手だった。iPhone 5では、KDDIに割り当てられていた800Hz帯や1.5GHz帯のLTE方式には対応していなかったからだ。ソフトバンクは2GHz帯のみでしかLTE方式を整備できない状況にあったため、iPhone 5発売時はLTEエリアで有利に立った。しかも当時1.7GHz帯でLTE方式のエリア整備を始めていたイー・アクセスを傘下に収めたが、たまたまiPhone 5はこの帯域でもLTEに対応していたため、ソフトバンクにとって追い風となった。

 iPhone 5がいい教訓であったが、通信事業者がLTEネットワークをどれだけ整備しても、端末側がそのバンドに対応していなければ、ネットワークは有効に活用できない。その後のiPhone 5s/5cでは、KDDIが主力的に整備してきたLTEバンドにも対応してくれたおかげで、LTEが利用できるエリアはソフトバンクと逆転するほど使い勝手が良くなった。とはいえ、iPhone 5s/5cでも、まだわが国で使われている周波数帯域の全てに対応しているわけではない。KDDIやソフトバンクが次期iPhoneに期待していることは、2.5GHz帯の対応だろう。

 この2.5GHz帯は、KDDIグループはUQコミュニケーションズでWiMAXおよびWiMAX 2+方式でサービス提供を行っている。同様に、ソフトバンクグループは、ワイヤレスシティプランニングがAXGP方式としてエリア整備し、ソフトバンク4Gとしてサービス提供を行っている。これらの帯域に対応したAndroidスマホは一部発売されているが、大きなシェアを占める端末といえるiPhoneにおいてもぜひ対応して欲しい帯域として両キャリアが熱望していた。(WiMAX 2+およびAXGPは共にTD-LTE方式と互換性がある)

 じつはソフトバンクが傘下に収めた米スプリントも、同様に2.5GHz帯でLTE(TD-LTE)のネットワークを持つ。ソフトバンクグループは、ソフトバンクの加入者数3,648万人(2014年6月末時点)と、スプリントの加入者5,426万人(2014年6月末時点)を合わせれば、9,074万人の加入者を抱える通信事業者となる。これだけの規模になれば、アップルに対して、ソフトバンクに有利になるようなLTEバンド対応を要求することもできるであろう。ということで、次期日本向けのiPhoneでも、2.5GHz帯のLTE(バンド41)にも対応してくれるのではないかと予測する。

 同時に、今後世界の多くの通信事業者がLTE方式を展開するとされている700MHz帯(バンド28)への対応にも期待したいところ。日本においても、700MHz帯は3事業者に割り当てられ、2015年以降、LTE方式でサービス提供を開始することが決まっている。日本の3キャリアで展開される周波数帯域だけに、これはアップルとしても無視できないはずだ。

 日本で販売される、スマホを含む無線通信機器は、電波法に定める技術基準に適合しているかどうかを指定機関で証明し(いわゆる「技適」)、その結果を総務省がWeb等で公示している。この公示内容を見ていくと、どのメーカーがどういった型番で新製品を発売するか予想が立てられると同時に、対応する周波数帯域も分かってしまう。当然、9月に次期iPhoneが発売されるということであれば、発売時点でこの手続きが完了し、証明番号が払い出されていなければならない。さらに言えば、スマホ新製品の発売前には、当然のことながら製品としての通信事業者側の評価やネットワークとの接続性の検証などを行うはず(日本では各通信事業社がアップルからiPhoneを数百万台規模で買い上げる訳であるから、事前に評価や検証などのやり取りがあるのは必然だ)。

 ということで、総務省の過去の公示を辿ってみた。昨年発売されたiPhone 5s(日本向け型番はA1453)とiPhone 5c(日本向け型番はA1456)の認証はどうなっているか。技適の証明および認証ができる複数の機関のうち、アップルは株式会社ディーエスピーリサーチという機関を通じて証明番号を取得していることが分かった。公示内容は総務省のこのページからリンクされている。このうち、株式会社ディーエスピーリサーチの2013年9月前半の公示資料を見ると、2013年9月11日付けでアップルからの申請に対してA1453(iPhone 5s)とA1456(iPhone 5c)の証明番号が払い出されていることが分かる。

 総務省から証明番号が公示されるのは証明日から数ヵ月後になるので、発売直前の申請であれば発売前にその情報が流出することはないのであろうが、とはいえ新製品発表日に証明番号が払い出されるというのは通常は考えられない。前述のように、検証などの目的で発表以前に国内で電源を入れることもあるだろうが、技適がなければ違法行為(電波法違反)になってしまう。

 さすがアップルはこのあたりに抜かりが無いのだろう。こうした公示内容から製品情報が流出することを嫌って、代理会社を通して別の型番であらかじめ技適申請し、国内での端末検証においてはその代理会社が取得した技適を未発売のiPhoneに使用して行っているに違いない。

 このことに気づいたある熱心なブロガーが、アップル製品の証明番号公示とぴったり一致する製品構成で、新製品発売の数カ月前にあらかじめ技適申請している代理会社の存在に気づき、公示内容を比較検証した情報がWebで流れていた。

 それによると、アップル製品が技適証明機関として使っている株式会社ディーエスピーリサーチの公示内容をさかのぼって見ていくと、時々登場してくるUpside合同会社がどうもアップルの代理会社のようで、たとえば同社が2013年5月15日に証明番号を受けているA28とA31という2モデルの内容が、アップルのiPhone 5s/5cの内容と合致している。なお、A31については2012年11月12日と2013年1月28日にも証明を受けている。改良を重ねていく段階での申請なのかもしれない。

 ということは、今回発表される次期iPhoneについても、同様にUpside合同会社から春先には技適申請され、証明を受けているはずである。

 2014年4月の株式会社ディーエスピーリサーチの公示資料で、2014年4月11日にUpside合同会社から申請され、証明されている「A41」という製品と、同じく4月14日に証明されている「A36」という製品が、どうも次期iPhoneの2ラインアップではないかと見られている。これを見る限り、LTEバンド28(700MHz帯)と、LTEバンド41(2.5GHz帯)にも対応していることが分かる。

 ということで、次期iPhoneは700MHz帯および2.5GHz帯に対応していると見て間違いなさそうだ。

 周波数の対応のほかにも、次期iPhoneに対して期待される声として多いのものが、NTTドコモが運用を始めたVoLTEや、KDDIが運用を始めたキャリアアグリゲーションへの対応だ。いずれも世界中のLTE対応通信事業者がこれらのサービスを順次展開していくことになるのだが、次期iPhoneがこれらに対応するかは何とも予想しがたい。アップルにとって、日本は非常に有望なマーケットである。スマホの国別メーカーシェアにおいても、日本はiPhoneが唯一シェアのトップを占めている国である。IDCは9月2日、日本国内携帯電話、およびスマートフォン端末の2014年第2四半期(4~6月)の出荷台数を発表しているが、依然としてアップルが首位だ。

 こうした状況からも、アップルは日本市場を意識した製品作りは心がけるであろうが、とはいえこれまでのiPhoneはローカルで使われ始めたばかりの新技術や新機能を無理に搭載したりすることはしてこなかった。VoLTEにしても、キャリアアグリゲーションにしても、いずれ世界の通信事業者において順次採用されているものであるが、ある程度市場で利用されるようになってから投入するというのがアップル流と見た。あくまで筆者の個人的予測だが、VoLTEやキャリアアグリゲーションは、今回のモデルでは見送りではないかと考えている。

 いずれにしても、あと数日後には、次期iPhoneの全貌が明らかになる。iPhone以外にも、新たなウェアラブル端末やヘルスケア関連サービスの登場も噂されている。どこまでユーザーをワクワクさせてくれるものが登場してくるのか、楽しみで仕方ない。

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第58回 次期iPhone、現時点での噂から気になるポイントを絞って予測

《編集部@RBB TODAY》

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