広島市は9月2日、広島駅南口広場の再開発構想の基本方針を決めたと発表した。広場内にある路面電車の停留場を高架化するなどの改良を行い、2020年代前半の完成を目指す。
現在の南口広場には、広島電鉄(広電)の路面電車が迂回(うかい)ルートで乗り入れており、広電の広島駅停留場の周辺にはバス乗り場やタクシー乗り場などが設けられている。基本方針によると、広場内の各交通施設の規模が小さく、広島駅停留場も処理能力が不足していることから、ラッシュ時には広島駅停留場に入れない車両が「行列待ち」の状態になっている。また、広電の軌道が迂回ルートのため、広島駅~紙屋町・八丁堀地区間の所要時間が長く、定時性や速達性の確保が課題になっているという。
こうしたことから基本方針は、路面電車のルートを変更した上で広島駅停留場を高架化。JR広島駅南口のアッセ駅ビル敷地内に高架の停留場(乗車場4カ所・降車場4カ所)を設けるものとした。このほか、バス乗り場(22バース)とタクシー乗り場(乗車場3台・降車場4台・プール約63台)などを高架停留場の両脇に設ける。
これに伴い路面電車のルートも大幅に変更し、駅前大橋を通る広島駅~稲荷町~比治山町交差点間の軌道を新たに整備する。その一方、現在の迂回ルートのうち広島駅~猿猴橋町~的場町間の軌道を廃止する。
運行系統の再編も実施され、広島駅停留場と広島港・広電宮島口・江波の各停留場を結ぶ系統(いずれも紙屋町経由)は、広島駅~稲荷町間の走行ルートを新設の駅前大橋ルートに変更。広島駅~広島港(比治山下経由)間の系統も、広島駅~比治山町交差点間は新たに敷設する軌道を走る。このほか、段原一丁目~的場町~八丁堀~紙屋町東~皆実町六丁目~段原一丁目間を結ぶ循環ルートを新設する。
基本方針は今後、約4年かけて環境影響評価や都市計画決定、軌道法の手続きを進め、JR広島駅の自由通路が整備される2017年度頃から事業に着手。その後5~6年で完成させるものとしている。南口広場の再整備や軌道の新設・撤去を含む総事業費は約155億円を見込んでおり、JRは広場造成費の6分の1を負担。路面電車の高架橋や停留場などのインフラ部は広島市が負担し、レールや架線などは広電が国の補助制度を活用して整備する。