NICT、新しい高精度マイクロ波原子時計の開発に成功

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イッテルビウムイオン原子時計の中心機構、イオントラップ
  • イッテルビウムイオン原子時計の中心機構、イオントラップ
  • a) 、b) はイオントラップの写真。c)はイオントラップ型マクロ波時計概略図

NICT 情報通信研究機構は8月20日、現在普及しているルビジウム原子時計の精度を約5倍上回る「イオントラップ型マイクロ波原子時計」の開発・試作に成功したと発表した。

時刻と周波数を決定する基盤となる精密な時計として、誤差10のマイナス13乗の精度が得られ、かつ価格が数十万円程度と安価なルビジウム原子時計が広く普及しており、精密測定や放送の分野で使われている。精密な時刻から位置情報を決定するGPSなどの測位衛星にもルビジウム原子時計が搭載されている。

さらに精度の良い原子時計として、誤差10のマイナス15乗という水素メーザ原子時計があるものの、価格は2000万円と高価になり、据置型で重いという。NICTは、ルビジウム原子時計と水素メーザ原子時計の間の大きなギャップを埋めるため、新しいイッテルビウムイオン原子時計を開発し、今回試作に成功した。

今回試作した原子時計は、イッテルビウムイオンを使ったイオントラップ型マイクロ波原子時計と呼ばれるもの。イオントラップという真空容器の中で、イッテルビウムイオンを浮かせたままマイクロ波で補足し計測することで時刻の基準となる周波数を得る。イオンが持つ熱エネルギーは誤差の原因となるため、レーザーをイオンに照射することでその運動を抑える。この形式の原子時計では、初めてレーザー冷却を用いることで、ルビジウムの精度を上回る原子時計を実現したという。

今後、NICTは原子時計の試作機の完成度を高め、小型化とコストダウンを進めて実用化していくとしている。イッテルビウムイオンを用いたマイクロ波原子時計が普及、高精度化すれば、精密測定機器の較正や、通信の大容量化に役立つと期待される。

《秋山 文野》

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