KDDIの格安SIMスマホ第一弾『mineo』を使う際の注意点

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シャープ製のmineoオリジナル端末「AQUOS SERIE」。auのAQUOS SERIE SHL25と同等品
  • シャープ製のmineoオリジナル端末「AQUOS SERIE」。auのAQUOS SERIE SHL25と同等品
  • mineo版には、auのロゴは無く、代わりにmineoのロゴが輝く。その希少性に惚れた
  • まずは筆者が仕事をする大学エントランス周辺で速度チェック。八甲田連峰麓の森の中ながらもまずまずな通信速度
  • ついでにフィールドワークで訪れた、青森市郊外の山中にある養蜂場でもかろうじてLTEを掴めた。電波が必死に回り込んできているな、という感じ
  • 8月2日から7日は青森ねぶた祭。この日はあいにくの雨でねぶたにビニールのカバーがかけられているのが残念(AQUOS SERIEで撮影)
  • 人口30万人の青森市にのべ300万人も観覧に来るという青森ねぶた祭の人ごみの中でもしっかり実用レベルに利用可能だった
  • 青森は何を食べても美味しい! そんな様子をさっと撮影してソーシャルに投稿… ちなみにここは大間のマグロ丼で有名な浅虫温泉の鶴亀屋食堂
  • AQUOS SERIEで撮影した鶴亀屋食堂のマグロ丼(ミニ)。このほかに小、中もある。ミニはライス小にマグロが10枚乗る。これにライスをもう一つ付けるとマグロとバランスが取れる感じ

 「格安SIM」、あるいは「格安スマホ」という言葉をこのところ頻繁に耳にするようになってきた。これらは、MVNO(仮想移動体通信事業者=ネットワークを既存通信事業者から借りて独自のブランドでサービス展開を行う事業者)が、SIMカード(スマホに入れるICチップでこれ自体が回線契約となる)または、SIMカードとセットにしたスマホを独自ブランドで販売するもので、NTTドコモ、au、ソフトバンクといった既存通信事業者のスマホよりもより安価に利用できることと、契約がシンプルで分かりやすいという点が消費者から人気を博しているようだ。

 そうした中で、少々異色のMVNOが出現した。それは、関西電力の子会社で、関西圏で光インターネットなどのブロードバンド事業などを手がけてきたケイ・オプティコムが提供する「mineo」(マイネオ)というサービスだ。もちろん、全国のユーザーが申し込み可能で、mineoのウェブサイトから申込を行い、LTE通信可能なSIMカードのみ、またはmineo専用のスマホとSIMカードのセットを購入できる。

 こうしたMVNOが乱立している中で注目すべきことは、このmineoはauのLTEネットワークを利用したMVNOである点だ。スマホ向けに提供されているMVNOはNTTドコモのネットワークを借り受けて提供するものばかりであった。しかし、mineoだけはauのLTEネットワークを利用できるという点が他社との大きな違いだ。このmineoのサービスを実際に利用して感じたことなどを2回に分けて報告したい。

■mineo(マイネオ)のサービス概要

 昨今、これだけMVNOの格安SIMが注目される背景には、NTTドコモ、au、ソフトバンクの既存3事業者が通話料定額の新プランを横並びで打ち出してきたところが大きい。なるべく基本使用料を安価に押えてケータイやスマホを使いたいというユーザー層にとって、既存3事業者の新料金プランは決して魅力的には映らないはずである。筆者の場合、どんな場所でも確実な通信手段を確保したく、常に異なる複数のキャリアのスマホを持ち歩いているが、であるからこそ基本使用料はできる限り安価に抑えたい。そこでMVNOを有効活用していこうということになるのだが、NTTドコモ以外のネットワークを使うMVNOは事実上皆無だったため、auやソフトバンクのネットワークで利用可能な安価な回線維持手段に待ち焦がれていたところだった。そんなタイミングで登場してきたのがこのmineoだ。

 まず、mineoのサービス内容と契約の方法をご紹介したい。mineoの利用に当たっては、まずmineoのウェブサイトでアカウント(eoID)を取得し、そのアカウントを使用して専用サイトにログインして行う。用意されているサービスは、データ通信専用の「シングルタイプ」と、3G網を使った音声通話サービス付きの「デュアルタイプ」の2種類。ちなみにデータ通信専用の「シングルタイプ」では本人名義のクレジットカードの入力のみで契約可能。「デュアルタイプ」では、本人名義のクレジットカードのほかに、本人確認書類の画像データアップロードが必要となる。また、音声通話サービス付きの「デュアルタイプ」ではMNPを利用し、他事業者で利用していた電話番号をそのまま継承して契約することも可能である(auからの乗り換えも可能)。またどちらのタイプにも、050の電話番号で始まるIP電話アプリ「LaLa Call」(ララコール)が月額基本使用料無料(パケットを消費することと、通話料は有料)で付いてくる。「シングルタイプ」でも050であるが専用の電話番号が付き、音声通話も可能である。「デュアルタイプ」ならば1回線で090/080の電話番号と、050の電話番号の両方を1台で利用することができる。

 利用料金はMVNOらしくシンプルだ。基本データ容量は1GB、2GB、3GBから選べ、データ通信のみの「シングルタイプ」の場合、1GBなら月額980円、2GBが1,580円、3GBが2,330円となっている。同じく音声通話可能な「デュアルタイプ」は1GBが1,590円、2GBが2,190円、3GBが2,940円となる。なお、契約後1年以内に解約する場合は「解約精算金」として9,500円が請求される(いずれも税別)。13ヵ月目以降の解約に関しては、この精算金は不要となる。

 次々に格安のMVNOが次々に登場している中で、mineoの利用料金はもはや「激安」と言える部類には入らないかもしれないが、少なくともauのLTEネットワークを活用できるスマホを、できる限り安価に利用したいという目的を果たすには唯一の選択となる。

 一方で、au網を使ったMVNOならではのメリット、デメリットも理解しておきたい。メリットは、なんといってもプラチナバンド(auは800MHz帯)のLTE網が使えるということ。NTTドコモもプラチナバンドのLTEはサービスインしているし、ソフトバンクは今夏からごく一部のエリアで始まったばかりという中で、プラチナバンド帯のLTEネットワークに最も力を入れているのがauというわけ。プラチナバンドのLTEがどのように有利なのかは後述したい。デメリットに関しては対応端末が現状は非常に限られているという点だ。mineoのデータ通信はauのLTE網の利用のみとなり、3Gネットワークは利用できない(デュアルタイプで音声通話を利用する際は、音声通話のみ3G網を使う)。つまり、LTE方式に対応したSIMロックフリーのスマホが必要となるのだが、大半のスマホは2.1GHz帯のLTEには対応しているものの、auの強みでもある800MHz帯のLTEに対応したスマホは限られてしまう。実際には、auが発売したスマホの中古機と組み合わせて利用するのが現実的となる。とくに2013年後半の発売機種であれば、auの800MHz帯、1.5GHz帯、2.1GHz帯の3バンド対応となっているので、そうしたスマホでmineoのSIMを利用するのがベストであろう。もちろん、auで販売したiPhone 5S/5Cや、アップルがオンライン販売するiPhone 5S等のSIMフリー端末でも利用は可能だ。

 スマホ端末も同時に購入したいというユーザー向けに、mineoでも独自にスマホ端末を提供しており、SIMカードと同時に購入が可能である。「シングルタイプ」「デュアルタイプ」のどちらでも同時に端末の申込ができ、端末代金は24回分割で毎月の通信料と合算して支払うことになる。

 端末は現在、京セラ製の「DIGNO M」とシャープ製「AQUOS SERIE」の2種類が用意され、DIGNO Mなら月額2,000円、AQUOS SERIEなら月額3,150円が加算される(税別)。いずれもauでも販売されている機種であるが、最初からmineoで利用することを考えるなら、mineoの各種付帯サービスのアプリ等があらかじめプリインストールされているmineo版のスマホのほうが初心者でも安心であろう。ちなみに、auと同スペックの機種ながら、mineo版のこの2機種には「au」のロゴは無く、代わりに「mineo」のロゴが輝く。筆者も当初はSIMカードだけチョイスするつもりであったが、この端末の希少さの誘惑に負けて、端末付きで申込をしてしまった。

■実際の使い勝手はいかに?!

 mineoは現時点でauのLTEネットワークを利用する唯一のMVNOである。NTTドコモのネットワークを利用しているMVNOは枚挙にいとまがないが、そうした中で筆者がmineoに期待したいのは、auが得意としている800MHz帯(いわゆるプラチナバンド)のLTE網の充実度である。プラチナバンド帯は、建物の奥のほうまで電波が回り込みやすいし、山間部などでのエリアでも有利そう。また、NTTドコモ(MVNOを含む)に比べると、auの契約ユーザー数が少ないことも注目しておきたい。限られた周波数帯域の中で各通信事業者がサービス提供を行っているわけだが、ユーザー数が多ければ多いほど、その分通信帯域をユーザー同士でシェアしながら通信することになるので、加入者が多い事業者の場合、通信速度が遅くなるなどの不都合も生じる。したがって、基地局配備等の通信設備の充実度ももちろんなのだが、そのインフラに対して利用するユーザー数が少ないほうがより快適に通信できるということになる。

 これは都心部でも当てはまることだが、じつは地方都市でも顕著に差が出てくる。筆者が暮らす青森に限らず、地方に行くほどNTTドコモのユーザー割合が高くなる。auのサービス提供エリアはNTTドコモと遜色がないところまで充実している一方で、ユーザー数自体は少ない、さらに言えばauの800MHz帯のLTE対応端末自体がまだまだ少ないので、少なくとも当面は快適に利用できるものと想像できる。

 800MHz(プラチナバンド)のLTEは、都心部では建物の中まで電波が回り込みやすいということですでに定評あるが、たとえば山間部でもそれなりに有利に働く。たとえば、筆者が勤務する大学は青森市郊外にあり、市街地から奥入瀬・十和田湖方面に抜ける八甲田連峰を上りかけた途中の森の中にある。こんな場所でも、NTTドコモとauの2事業者に関してはLTE網が整備されている。大学のエントランス付近で通信スピードテストを実施したところ、下り28.6Mpbsとまずまずの数値を叩き出す。また筆者の研究室内など、建物内で比較しても、明らかに電波が回り込んできていると実感できる。

 そして、これもmineoが有利であろうと思われたのが、人でごった返す中でのデータ通信だ。青森市では毎年8月2日~7日の6日間、全国的にも知られている「青森ねぶた祭」が開催される。東北三大祭の一つで、幅約9m、高さ約5m、奥行き約8mと言う規定の中で作られた大型の灯籠を担いで青森市中心部を練り歩く盛大なお祭だ。人口わずか30万人の青森市に、このお祭の会期中にはのべ300万人以上の観覧客が訪れる。

 花火大会など、人がたくさん集まる場所ではケータイやスマホがつながりにくくなることは知られているが、言ってみれば青森ねぶた祭開催中は青森市中心部は毎日が「花火大会」と同じような状態だ(実際、最終日は約2時間にわたって花火が打ち上げられる)。

 そんなごった返し状態の中にも関わらず、この祭の中でもしっかり通信できることが確認できた。周囲の観覧客の多くがスマホを利用していたが、使い方はみな一緒で、スマホのカメラを使って写真や動画を撮影し、さらにその画像等をリアルタイムに友人たちにメールしたり、ソーシャルネットワークにアップロードするなどしている。他の通信事業者のネットワークを使うユーザーのとっては、かなり混雑気味なネットワークに誰もがストレスを感じている様子だったが、筆者の場合、mineoを使って撮影したねぶたの動画をfacebookにすんなりと投稿することができた。

 以上がmineoのファーストインプレッションだ。NTTドコモのネットワークを使うMVNOはこれからも乱立していくことが考えられ、ネットワークの混雑は一段と増していくと思われるが、mineoは唯一auのLTEネットワークを利用したMVNOとして、少なくとも向こう1~2年は快適に使えるものとみた。

 さて、次回はmineoを利用するための端末について、その設定方法、端末調達手段やSIMとの相性などをレポートしたい。

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第53回 au網を使ったMVNO、ケイ・オプティコムの「mineo」をレビュー Part1

《木暮祐一@RBB TODAY》

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