穴に電線やハーネス線を通しただけで、きれいに銅線が剥がれる。その名も「電線マン」。大阪府枚方市に本社を構えるアスクが開発した廃電線被覆剥離機だ。
同社は自動車や医療機器などの試作部品を製作する精密加工会社で、その技術力とスピードには定評がある。しかし、リーマンショックで受注が減り、大きなピンチに。そこで、これまで培ってきた技術を使って自社製品をつくることになった。
コンセプトは「環境に優しく、福祉に役立って、社会に貢献できるもの」。試行錯誤の末、生まれたのが電線マンだった。「これまで電線剥離機は大量に処理を行う、設置型の大きなものばかりで、小さなものがなかった。これは持ち運べる大きさで、処理も1本1本を行う。5mm以下の電線に対応しているのはうちの商品だけ。そのうえ、誰でも簡単に使えるようにした」と同社関係者は説明する。
細い電線を剥ぐのは手間がかかるので、今まで捨てられることが多かったが、この製品によってほんの数秒で銅線だけを取り出すことができ、資源の有効利用が図れるようになった。昨年には「優秀環境装置賞」で中小企業庁長官賞も受賞した。
「その審査で、実際に使われている現場を見たいというので、福祉施設に案内したところ、障害者が銅線をスムーズに剥ぐ姿を見て、審査員は感激していました」と当時の様子を話す。
これから海外にも打って出るそうで、今週タイで開催予定の展示会に出展する予定だ。電線剥離機は市場が小さいニッチな分野だが、そこでアスクは存在感を高めつつある。