トヨタ自動車が5月8日発表した2014年3月期決算は、純利益が前期比89.5%増の1兆8231億円と最高益を更新した。にもかかわらず、会見に臨んだ豊田章男社長の顔からは一切の笑顔がなかった。
それどころか、今後のリスクについて「リスクにはコントロールできるものと、できないものがある。大企業にありがちなおごりが出ることが最大のリスクだ。感謝の心を持ち、より謙虚にみんな心を合わせて素直に世の中の声を聞いていきたい。これは回避できるリスクと思っている」と豊田社長は強調。
普通の企業の場合、最高益を更新したら、野心的な目標を掲げて株価を上げる努力をし、日本経済をさらに盛り上げようとするものだが、トヨタの場合は違った。
「屋久島の杉のように毎年毎年1つずつ年輪を重ね、持続的に成長していきたい。年輪を重ねるエンジンは商品と人材。それに経営資源をしっかりと投入していく。商品にしても持続的成長が目的なので、収穫ばかりしていてはいけない。耕す、種をまくところをおろそかにしない」
豊田社長はこう話し、2000年代後半の反省を踏まえ、あくまでも地道な経営を貫いていく方針だ。