マグネシウムと聞けば、アルミ以上の軽さを誇る金属として、レース用のホイールなどコストよりも軽量化を重視するパーツに使われる素材というイメージがある。だが実際にはマグネシウムは身近なところでかなり使われている金属なのである。例えばビデオカメラやデジカメ、携帯電話などのフレームやカバー、やはり強度と軽量化を両立したい部分にマグネシウム合金は使われている。
しかし強度が高く軽量にできるというメリットはあっても、腐食に弱く、また熱にも弱いという弱点があって、使える部分が限られる、というのがこれまでの常識だった。ところが他のマテリアル同様、マグネシウム合金も進歩していたのだ。
そんな進歩したマグネシウム合金を利用した製品は高機能金属展にも色々見られた。最も大きなものではシボレー『コルベット』用のエンジンクレードルがあった。これはオーストラリアに本社を置くMAGONTEC社の製品で、レアアースを添加することで高温時の強度を高めたマグネシウム合金で、アルミと比較して34%も軽量化を達成していると言う。
さらには意外だったのは、ステアリングホイールの骨格にもマグネシウム合金が使われていることだった。同社の説明員によれば、乗用車用のエアバッグステアリングの9割はマグネシウム合金を使っているそうだ。軽量化に役立つだけでなく、樹脂に比べて折れてドライバーを傷つけることが少ないのが、採用の理由だとか。
福岡県の戸畑製作所は、高強度、耐熱性に優れたマグネシウム合金として注目を集めているKUMADAIマグネシウムと共同のブースで、同じく耐熱マグネシウム合金のエンジン用ピストンを展示していた。これはダイハツメタルと共同研究しているもので、シリンダーブロックやタイミングチェーンのカバーもマグネシウム合金に置き換えてテストしている。50時間の全負荷テストでは、良好な結果が得られているようだ。
20cc程度の汎用エンジンの小さなピストンでも、マグネシウムに代えることにより、振動が20%も低減できたと言う。それはピストン自体が軽量になったことに加え、優れた減衰特性をもつことが影響しているそうだ。しかもアルミに比べて潤滑性が高いことも、ピストン用のマテリアルとしては強みとなるようだ。
戸畑製作所の平野正晃氏によれば、従来600度で自然発火してしまうマグネシウム合金に900度を超えても燃えない難燃性を持たせたことにより、アルミ合金製より30%も部品を軽量化することに活用できるようになったと言う。さらに実用金属中では最大の振動吸収性をもつマグネシウムの特性は、今後クルマや航空機用の素材として魅力的なものになりそうだ。