【BMW 435i Mスポーツ 試乗】よりジェントルかつワイルドな高性能クーペ…高根英幸

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BMW・435i Mスポーツ
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同じ『4シリーズ』でも6気筒エンジンを搭載した『435i』は、やはり『428i』とはランクの違う、上質感と速さを感じさせるクルマだった。

低速から湧き出るようなトルクにより、クルマの動き方が鋭く、それでいて一際スムーズ。それがゼロからどの速度域でも味わえるのだから素晴らしい。

エンジンフィールはかつてのシルキーシックスとはムードが異なり、スムーズではあるが直噴ならではの燃焼ノイズのせいか微小な振動とノイズを伝えてくる。とはいえ直列6気筒が軒並み消滅してしまった現在では、このスムーズさは魅力的だ。どこから踏んでも豊かなトルクで4シリーズのボディを瞬時に加速させる。

しかも伸びやかさは、やはり4気筒とは違う。5000rpmを超えると排気音に荒々しさが加わり始め、ダイナミックな加速は6500rpmまで続く。その加速力は豪快という言葉が相応しいほど、強力だ。それはそうだ、400Nmものトルクを1200rpmから5000rpmまで発生させるのは、NAなら5リットルエンジン以上のレベル。4シリーズのボディには十分過ぎる。

8速ATの反応も良く、走行中はダイレクト感も高いので、正直言ってDCTの必要性を感じないほどだ。もちろんMモデルなどスポーツ性を限りなく求めているマシンにはATではなく、より伝達効率の高いDCTが相応しいが、スムーズさとダイレクト感の両立という点に置いては、この8速ATの完成度は現時点で屈指のレベルにある。

エンジンの大きさ重さは違うが、ハンドリングの基本特性は4気筒の428iと同じ。エンジンの搭載位置やサスペンションのチューニングで旋回時の回転中心はリヤ寄りになっている。さらにはエンジントルクの太さが車体の重量増を感じさせないから、フットワークはキビキビとしたものだ。

サスペンションダンパーの減衰力やステアリングの重さ、シフトタイミングは最近のBMW車らしく、スポーツやコンフォートなど特性を選べる。
こちらはMスポーツだからか、ラグジュアリーほどステアリングフィールの変化は大きくはないように感じた。ただ足回りはスポーツモードでは硬めで、だからといってコンフォートを選ぶと、路面が荒れている部分を通り過ぎるとダンピング不足で足がバタつくこともあった。

内外装の仕立てで好みはあるものの、スポーツモードの硬めの乗り味が気になるなら、Mスポーツではなくラグジュアリーもしくはスポーツを選んだ方がいいと思う。

日常的に使われるのはもちろん理想的だろうし、休日の愉しみにこのクルマで思うままに走る、そんな贅沢な非日常的用途にも、この435iなら応えてくれそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア・居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

高根英幸/自動車&工業技術評論家(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
芝浦工大機械工学部卒。トヨタ直営ディーラーの営業、輸入車専門誌の編集者を経てフリーの自動車ライターに。クルマのメカニズムすべてに興味をもち、旧車からハイテクまで納得いくまで解析。ドライビングだけでなくメンテナンスやモディファイも自ら積極的に楽しむ。自宅1Fの書斎兼ガレージには整備用リフトも完備。著書に「クルマのハイテク」(ソフトバンク・クリエイティブ刊)

《高根英幸》

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