理化学研究所は、米国カリフォルニア工科大学などと共同で、「カシオペア座A」が超新星爆発した時に生成された元素のうち、チタンの放射性同位体「チタン-44」が放出した高エネルギーのX線を捉え、鮮明な天体写真の撮影に初めて成功した。
今回の撮影成功で、超新星爆発が従来説の「球対称」や「軸対称」爆発ではなく、非対称な爆発だったことが明らかになった。
今回の成果は、米国カリフォルニア工科大学のブライアン・グレフェンステット博士、フィオナ・ハリソン教授と、理研仁科加速器研究センター玉川高エネルギー宇宙物理研究室の北口貴雄特別研究員らで構成される国際共同研究グループによる。
国際共同研究グループは、アメリカ航空宇宙局(NASA)のNuSTAR衛星に搭載した高エネルギーX線集光望遠鏡を使って、重力崩壊型の超新星爆発の残骸であるカシオペア座Aを延べ2週間観測。チタン-44が放出した高エネルギーのX線を初めて鮮明に撮影した。
この写真から、チタン-44は爆心から非対称的に分布していることが分かった。これは、超新星爆発のメカニズムを理解する重要な手がかりとなる。
また、チタン-44の爆発時の総質量は、地球質量の40倍に達することも判明した。この成果により、今後、超新星爆発と、それに伴う元素合成の理論モデル構築が進むことが期待される。また、今回の研究成果は、英国の科学雑誌「Nature」2月20日号に掲載されるという。
一方、理研玉川高エネルギー宇宙物理研究室は、2015年に打ち上げ予定の次期X線観測衛星「ASTRO-H」計画に参加している。
ASTRO-H衛星は、日米を中心に世界の研究者が協力して開発を進めている衛星で、元素と電子の反応により放出される低エネルギーX線を、従来の10倍以上の感度で検出できる装置を搭載する計画。この新しいX線検出装置により、これまで宇宙では確認されていなかった元素が、超新星爆発から見つかる可能性がある。