【ハイエース開発主査に聞く】0.1ミリ単位で追い込みながらも大胆デザインを敢行

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発売9年を経ても販売台数が全く落ちない、怪物200系『ハイエース』。そのマイナーチェンジ開発担当主査に任命されたということは、包原氏には相当なプレッシャーがあったのではないだろうか。

包原氏(以下敬称略):あまりプレッシャーは感じませんでしたね。と言うのも、基本がしっかりしているからこそ、200系ハイエースは評価されていると思うのです。根本に問題があってマイナーチェンジでそれを改善しなくてはいけないとなると、かなり手を入れなければいけないので大変ですが、基本がしっかりしているので、後は何を盛り込むかという問題だけでした。

変えられないハイエースらしさとは

話を聞いていくと、200系ハイエースのマイチェンには色々な制約が発生したことが分かった。

包原:特にデザインには困りました。変える部分がない。すでにボディは5ナンバーサイズギリギリまで広げられていますから、1mmも伸ばせないんです。今回マイチェンを担当したデザイナーは、200系を作った人間なのですが、相談した時に最初に言われたのが「何をやれっていうんですか」という返事でした。それでも200系ハイエースを愛している人間の一人ですから、「とにかく良くしよう、変更できる余裕はほとんどないかもしれないが頑張ろう」と、前向きな気持ちで乗ってきてくれたので良かったですね。

新しいハイエースのスタイリングで印象的なのは、やはりフロントマスクだろう。このデザインが意味しているところ、このデザインになった背景については。

包原:フロントマスクのイメージを強調することを目的に、ヘッドライトの水平ラインと、フロントグリルからアンダーグリルまでの連続したラインにすることで大きなT、ラージTをイメージしたデザインにしました。基本的な開口部の位置は決まっているので、こうしないと変化が感じられない、というのもありました。

デザイナー最大の苦労

原点回帰とも思えるようなシンプルで力強いイメージは、200系初登場時のインパクトを思い起こさせるものだ。これでスタイリングの鮮度を取り戻した。従来の200系ユーザーが買い替えたくなるほど魅力的なデザインではなかろうか。

包原:今回、エクステリアで変更したのはグリルとバンパーとヘッドライトですが、ご存知のように200系ハイエースにはナローと呼んでいる標準ボディのほかに、ワイドもあります。バンパーはワイド専用になるのですが、ヘッドライトやテールランプはナローとワイドで同じモノを使っているのです。デザイナーにしてみれば、ワイドはワイド用のヘッドランプにしてバランスを取りたいところですが、コストの問題もあって共用しなければなりません。0.1mm単位でデザインを考えている一方で、車幅が185mmも違う。それにルーフも変わってきますよね。それなのにフロントマスクでも一番重要な目力(めぢから)を同じレベルで成り立たせなければいけないんですから、デザイナーは苦労しましたよ。

ワイド感とスタイリッシュ性の間

その苦労の甲斐あって、同じヘッドライトを使っても200系のワイドボディは実に自然でスタイリッシュだ。むしろ左右のヘッドライトが離れているからワイド感をより強調しているようにも見える。必要なくてもワイドを購入したくなるほど、迫力がある。「今度のワイドはもっと迫力ありますよ」と包原氏は静かに言う。そこに新しいハイエースのスタイリングにおける自信が窺えた。

スタイリングをいじるのは、マイナーチェンジしたことを市場で認識してもらうためにも重要なことだ。しかし、それだけがマイチェンの目的ではあるまい。特に200系ハイエースはスタイリングの鮮度を失っていた訳ではないから、見た目以外の内容に納得してもらえなければ、新しいハイエースは歓迎されない。それでは中身は何をどう変えたのか。

そこにはユーザーに対する想いと、ハイエースへの思い入れがあった。

《高根英幸》

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