飼い犬安楽死拒否の獣医訴え
駐台北のオーストラリア外交官が地元獣医を相手取って、「犬薬殺料返還」の訴訟を起こし、台湾国民の憤激を買っている。
オーストラリアは台湾と公式の国交を結んでいないため大使館を持たず、台北に政府事務所を置いている。ケビン・マジー外交官の前任者、アリス・コウト氏が通りで野良犬を拾い、ベンジーと名付けて飼っていたが、上海に転任になったため、10歳の犬の世話をマジー氏に預けた。
今年7月にベンジーが卒中を起こしたため、マジー氏は、ベンジーを地元のヤン・ドンシェン獣医のところに持って行かせ、薬殺させるようにフィリピン人家政婦に指示した。しかし、ヤン獣医がベンジーを診察した結果、「治療すれば元気になる」と判断し、家政婦には「薬殺する必要はない」と断った。家政婦は一旦事務所に戻ったが、再びヤン獣医の病院に来て、どうしても薬殺するようにと主張した。
そこでヤン獣医は、薬殺と火葬の料金を請求すると、ベンジーを自宅に連れて帰り、自費で治療し、その結果、ベンジーは元気になった。ところが元気になったベンジーはヤン獣医の庭から抜け出し、オーストラリア政府事務所に走って帰ったが、そこで野犬捕獲人に捕獲された。マジー外交官は、「私たちはヤン獣医を信頼していたから、ベンジーが戻ってきた時はショックを受けた」と語っており、ヤン獣医を詐欺で訴えた。
ヤン獣医は台北では敬意を受けている人物で、この訴訟が報道されると予想通りのことが起きた。台湾で動物救助団体を運営しているイギリス人、ショーン・マコーマック氏は、「私たちは900頭以上の動物を救助してきたが、そのほとんどがヤン獣医の治療を受けた。いずれも大幅に値引きするか、時には無料で治療してくれている。ヤン獣医は仏教徒として非常に心優しい人物だ。マジー氏が、動物の命を救ったことでヤン獣医を訴えたという報道に台湾国民は信じられない気持ちだ」と語っている。
マジー氏は、8月23日に声明を発表し、「私たちの家族は、ベンジーに無用な苦しみを与えるよりも人道的に安楽死させるという苦しい決断をした」と発表している。現在、ベンジーは元の飼い主、マジー外交官が世話しているが、マコーマック氏は、ベンジーの解放を要求している。(NP)