宇宙航空研究開発機構(JAXA)が「D-SENDプロジェクト」で使用する試験用の機体はエンジンを搭載していない。自力で動作不可能なこの機体で音速を突破させる方法は非常に単純。上空から投下し、自然落下中に目標の速度に達するようにする。
落下試験を実施するのは、スウェーデン・キルナ市にあるエスレンジ実験場。試験機は動力を持たないが、地上からのコントロールによって水平尾翼のみ稼働するようになっており、任意の角度で飛行させることができる。いわば「全長8mの巨大なラジコン」といった感じだ。ここで熱気球を使って試験機を上昇させ、高度約30kmで切り離し。地表に向けて約50度の角度でダイブさせると、やがて目標値のマッハ1.3に達するが、この際に発生するソニックブームを計測することになる。
用意する機体は2機。試験予定も2回で、現地の気象状況を考慮しながら前日までに決定する。試験機を上昇させる熱気球は薄い素材で構成されており、箱から一度出すと再収容ができないため、気球を箱から出す=試験実施となる。
ソニックブームによって発生する騒音については、係留した熱気球から垂らしたマイクを使って測定する。このシステムについては、音速で飛行することが可能な戦闘機を用いて、事前に有効性を確認しているという。
試験エリアはかなり広大なものだが、速度が速度だけに「あっという間に通過してしまう」という。役割を終えた試験機は回収されることなく、再度の操作によって地面に激突。破壊処分を実施する。もったいないような気もするが、試験機自体でデータを取っているわけでもなく、回収費用の面からもこれがベストの選択だとする。破片の回収も行わず、そのまま廃棄してくることまでが実験場を管理するスウェーデン宇宙公社との契約に含まれているそうだ。