【インタビュー】「ディーラーだからこそできる“いいクルマづくり”がある」…トヨタカローラ徳島 北島義貴社長

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【インタビュー】「ディーラーだからこそできる“いいクルマづくり”がある」…トヨタカローラ徳島 北島義貴社長
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トヨタカローラ徳島は企業向けクラウド大手、米セールスフォース・ドットコムのCRM(顧客関係管理)システムを2012年に国産車ディーラーでいち早く導入した。その経緯とディーラーが目指すべき方向性にについて、同社の北島義貴社長に話を聞いた。

◆仕事の結果だけでなくプロセスを見える化

---:トヨタカローラ徳島は、自動車ディーラーにセールスフォースを導入した本飛渡初めての事例だと思いますが、その経緯をお聞かせ下さい。

北島社長(以下敬称略):セールスフォースを導入したのは2012年の2月です。自動車ディーラーのビジネスは、販売台数と言う部分では分かりやすいのですが、成約に結びつくまでの商談プロセスを見える化することが難しく、またサービスなどのアフター部分でのお客様のロイヤリティ向上を実践するのは難しいのです。

いままでも、商談の場合はボードにマグネットのチップを1件1件起こして商談の進捗ごとに動かして手でやっていましたし、集計もやっていました。ですがその方法では、お客様が必要としている時に、タイムリーに接触できているか、その際どんなアプローチをしているかが見えてこない。それを把握してマネジメントするもかなりの負担です。

単に「見える」だけではだめで、営業マンが胸張ってお客さんに提案できるようなことをさせなければいけない。その提案をするためにはきちっと事前に計画が立てられなければいけない。その時に何をベースにして作戦を立てるか、お客様の基本の情報がどこにあるかということも大切だし、それを表現するためのツールも大切になる。そんな一連の仕事の流れというか、仕事のあり方を見える化したのが今のシステムです。

---:ディーラーに必要とされているのは、来店から納車だけでなく販売後のサポートから代替までいたるライフサイクルでのCRMだった、と。

北島:自動車ディーラーの仕事は、商品におんぶにだっこの部分があり、魅力あるラインナップがあれば、自分たちディーラーのブランドを作らなくても成立できます。

システム導入前もそういう掛け声はかけていたが、それをやらなくても事業は成立していた。なぜかというとそれは商品力があるからです。全体を100とすると、商品力80で営業力20がなんです。だけどワントゥーワンの関係の中では、お客さんからみれば商品力49で、我々との付き合いが51、そんな世界にしたいと考えていました。

が、新車販売の市場が飽和する中でビジネスを拡大しようとすると、よく言われるように中古車や修理・点検入庫といったサービスも含めたバリューチェーンのビジネス拡大が必須です。その中古車やサービスのように、ディーラーでしか持ち得ない部門がきちんと連携しあうことが重要です。

新車を売るためには、下取りを高く取れればお客様は嬉しいはずですし、そのためには高く取ってもリセールできるだけの小売り力が必要です。さらに、そこで利益を上げるためには圧倒的なコストで商品化できるだけのサービスの力も必要です。

◆サービス売上単独で一般管理費の7割以上をカバー

---:新車・中古車・サービスというディーラーの“総合力”が必要とされる時代になってきた、と。

北島:現状、販売の9割は代替えです。そうした顔も名前も分かっている既存のお客様にとっては、信頼感が大切です。お客様とセールススタッフ個人がつながるというよりも、その後ろに店舗が見えて、会社とつながっていると思ってもらえること。そして、「あそこの会社なら大丈夫だ」と思ってくれるような仕組みがなくてはいけません。

---:実際にツールを入れて、見える化したことによる成果はどのような形で表れてきましたか。

北島:車検を例に出すと、当社では当月末で翌月分の車検予約を50%、翌々月分を20%とることを目標に取り組んでいます。全てのお客様に対して、車検入庫を最後まで確認します。保険にしても同様です。連絡のつかないお客様がいても、もしかしたら入院していたり、何らかの事情で電話に出られなかったのかもしれない。しかし、万が一お客様が車検日や保険の満期を忘れ、事故を起こされてしまったら、それはお客様にとってもマイナスです。安全や安心を守ることも我々の役目ですから。車検や保険の更新など、お客さんから『まだか』といわれるのではなく、『ありがとう』といわれる提案ができるようになる。適切なタイミングの提案という“間(ま)”も、重要なファクターです。

セールスフォースのおかげで、もれなく連絡し最後まで確認する活動を徹底出来るようになりました。目標としている翌月の車検予約50%にはまだ届いていませんが、着実にに近づいてきています。

---:サービス関連売上も上がってきているのでしょうか。

北島:一般管理費におけるサービス関連売上のカバー率でいうと、圧倒的に高いですよ。うちはサービス単独で75から80%くらいありますね。これはカローラ店アベレージでいくと55から60%の間だと思います。サービスのカバー率が強いから、いわゆる“ストック”で稼げる構造ができています。プロセスが見える化されたことで、連絡・訪問から受注までの確率が分かるようになり、さらに売上の読みを見込めるうになったことも大きいです。

---:仕事のあり方はどう変わってきましたか。

北島:きちっとお客さんとコンタクトをとって、しかもタイムリーに、きちっとやっぱりお客さんの望んでいることを提案し、きちっとお客さんの安心と安全を守って差し上げ、最終的にうちの会社も収益が上がり、収益が上がることで社員の賞与も増やしてあげ、昇給もきちっとし、三方良しになっていくことをきちっと意識した上で、新車、中古車、サービスが部門の壁を無くしながらぐるぐる回していくことですね。

◆ディーラーだからこそできる“いいクルマづくり”もある

---:セールスフォースを導入して成功できたのは、トヨタのディーラーだからでしょうか。それとも御社ならではのノウハウがあったからでしょうか。

北島:私は仕組みは何でもいいと思っています。e-CRB(トヨタの海外ディストリビューターがディーラー向けに展開しているCRツール)も正しいし、セールスフォースも正しい。ですが、セールスフォースとのつながりは、すでに「トヨタフレンド」という実績があり、ベニオフ社長と豊田章男社長とがつながりがあるという背景がなければ、つまり“トヨタの”ディーラーでなければ実現できなかったことでしょう。

---:導入に際しては、トヨタ本社から意見や反応はありましたか。

北島:意見は特にはありませんでしたよ。ただ、当社が直接セールスフォースと取引をするよりも、今後他のトヨタディーラーで展開する可能性もあることから、アカウント管理も含めてトヨタメディアサービスに間に入っていただき、相談ごともトヨタメディアサービスと随時やっています。

---:北島社長の目指すディーラーの理想像は、どのようなものでしょうか。

北島:豊田社長は、つねづね「もっといいクルマつくろうよ」とおっしゃっています。車両の企画や設計、工場といった開発・生産現場での活動だけでなく、ディーラーだからこそできる“いいクルマづくり”もあるはずです。お客様とクルマの間を取り持つディーラーが、商談のあり方や営業活動、購入後のサポートをきちっとやって、お客様との信頼関係をつくっていく。これが私たちにとって、いいクルマを実現させるための取り組みなのです。

《聞き手・執筆 小松哲也》

《まとめ・構成 北島友和》

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