クラリオンが出展したのは大型トラックが所狭しと並ぶホールN2の一角。出展で目玉となったのは、今年度末頃にリリース予定とした独自のテレマティクスサービスだ。クラリオンはこのサービスの提供によって激戦が続く中国メーカーとの差別化を一気に広げたいとする。
テレマティクスサービスは、中国国内のディーラーで販売される車種専用のAVNユニット上でデモされていた。CD/DVDドライブを備えるこのユニットにスマートフォンを接続し、目的地情報(POI)をはじめ、ニュース、天気予報といった情報の提供、さらにはホテルやレストランの情報からは直接電話回線でつないで予約できるようにもしている。また、リアルタイムのフライト・インフォメーションも得られていた。ユニット自体は既に販売されている製品で、ファームウェアの書き換えを行うことでスマートフォン連携が可能になる。通信料はユーザー負担となるが、コンテンツは無料で提供される予定だ。
クラリオンは一昨年の上海モーターショーで、スマートフォンと連携して使う「車載用次世代スマートフォン・コネクティビティシステム」を公開。昨年5月にはクラウド型テレマティクスサービス「スマート アクセス」を構築し、北米や日本を皮切りにサービスを順次グローバル展開するとしていたが、このサービスはその流れに沿ったものだ。ただ、その際は「ナビやビデオ再生といったニーズが高い機能についてはスマートフォン側の機能を活かす」としていたが、この製品ではこれらの機能をインクルード。スマートフォン側からはPOIを得てルート探索を行うものとなっていた。
年間約2000万台近くが販売される中国自動車市場においてAV一体型ナビ搭載車は約800万台ほど。このうち約600万台が自動車ディーラーで車種専用のビルトイン型を選び、純正カーナビを選ぶ人は残りの約200万台に過ぎない。注意したいのは、この“車種専用のビルトイン型”は純正ではなく、あくまでアフターメーカーの製品。日本なら自動車メーカー系ディーラーが社外品を販売することは滅多にないが、元々、中国のカーディーラーは自動車メーカーとの資本関係が希薄で、必ずしも販売する製品が純正品でなくても問題はない。ユーザーにしてみれば純正に近い製品が安い価格で買えるのであればそれで十分ということなのだろう。
こうした状況の中でテレマティクスサービスを提供する理由として、クラリオンの現地法人である東莞歌楽東方電子有限公司の総経理、泉亮太郎氏は「中国国内にこうした製品を供給するメーカーは100社以上はあって、上位20社程度が熾烈な戦いをしている。その差別化のためにテレマティクスサービスは重要コンテンツになる」と説明する。とはいえ中国国内のメーカーも共同でテレマティクスサービスを提供する事業を立ち上げ済み。これについて泉氏は「立ち上げたのは事実だが、サービスが順調に提供されている状態にはなく、コンテンツ品質で差を付けたい」と説明した。
会場には車種専用のビルトイン型モデルを展示した他、昨年のCEATECで発表したフルデジタル・オーディオシステム「01 DRIVE」を出展。カーオーディオに対する先進技術で中国メーカーと差があることのアピールも忘れていなかった。