JAXAなど、新しい宇宙関連材料強度データシートを発行

宇宙 テクノロジー

物質・材料研究機構は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携して宇宙関連材料強度データシートを発行した。

両者はH-IIとH-IIBロケットの信頼性向上を目的とした実使用材料の強度特性データ整備活動を推進しており、その成果の一つとして、宇宙関連材料強度データシート「No.20アロイ718(1228K溶体化処理)母材、溶接継手の破壊靭性と高サイクル疲労特性データシート」と、宇宙関連材料の破面写真集「No.F-4アロイ718鋳造材の破面」を発行したもの。

この活動は、物質・材料研究機構の第三期中期計画での知的基盤の充実、JAXAの第二期中期計画での基幹ロケット維持・発展に向けた取り組みの一環として進められている。これまでにチタン合金やニッケル基超合金の極低温における疲労メカニズムの解明など、多くの成果をあげている。

宇宙関連材料強度データシートのNo.20は、H-IIA、H-IIBロケットのエンジンに使用されているアロイ718板材の母材とElectron Beam Welding(EBW)、Tungsten Inert Gas welding(TIG)の各溶接継手に関するもの。液体窒素室温、高温における引張特性、破壊靭性、高サイクル疲労特性のデータが掲載されている。

また、供試材の金属組織写真と破断した疲労試験片の破面写真、疲労破壊起点部付近の金属組織写真を掲載している。

宇宙関連材料の破面写真集No.F-4は、H-IIAとH-IIBロケットのエンジンに使用されているアロイ718鋳造材に関するもの。発行済みのデータシートNo.10と18に掲載した金属組織写真と、データを取得した試験片の破面写真を掲載しており、写真の総数は2300枚以上に及ぶ。今回発行する破面写真集の配布は、国内の希望者に限定しており、破面写真集にはPDF化したファイルが記録されたCD-ROMが付加される。

液体ロケットエンジンの信頼性を向上させるためには、エンジン運転時の過酷な環境下、強度余裕を高い精度で把握し、構造設計や製造・検査工程に反映する必要がある。今回、発行したデータと既刊のデータは、H-IIロケットとH-IIBロケットの第1段エンジンと第2段エンジンの強度余裕評価や改良設計に使用され、打上げ成功に大きく寄与している。また、将来のロケットの研究・開発にも用いられる。

《レスポンス編集部》

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