「定時運航はJALのスタッフだけで成し得るものではありません。お客様の協力があって、初めて成し得るものなのです」と語るのは、JALスカイ羽田事業所・国内パッセンジャーサービス業務グループの長谷川陽子さん。地上で接客業務を行うスタッフの統括をしている。
機内の清掃がどんなに早く終了しても、荷物の積み込みが滞りなく完了しても、乗客が乗り込まないことには出発できない。スムーズに機内へと案内することが地上スタッフに求められるという。
「現在は優先搭乗のお客様を除き、後方列のお客様からご搭乗の案内をしているのですが、これは飛行機の中に入ってから通路への滞留を防ぐためです」と説明する。
座席上の物入れに荷物を入れようとする人は通路に留まってしまうため、通路で渋滞が発生することになる。これを防ぐために後方列から機内へ案内し、搭乗に掛かる時間の短縮を図っている。
厄介なのは保安検査場を通過した後に行方不明となってしまう人だ。時間を余裕をもって検査場を通過した人に多くみられるのだが、お土産を探したり、食事をしたりしていて、結局は搭乗ゲートに現れるタイミングが出発時間ギリギリになってしまう。
「今は搭乗券に二次元コードが印刷されていたり、ICカードが搭乗券代わりになっていて、お客様がチェックインしたのか、どこの検査場を通過したのか、あるいはまだお手続きしていないのかといったことがある程度は把握できるようになっているので、以前よりは捜索も楽になりました」と長谷川さん。
そう、最終手段は「地上スタッフによるお客様の捜索」なのだ。
チェックインの有無や検査場の通過情報は運行管理部で把握しているので、地上スタッフに「このあたりを捜索してください」と無線で指示が飛ぶ。地上スタッフはお客様の名前を呼び、立ち入っていそうな売店の中もチェック。発見した場合は一緒にゲートまで走ることになる。
羽田空港で多いのは「座席番号と搭乗ゲートの勘違い」だという。JALの使用する第1ターミナルに割り振られたゲート番号が若番のため、飛行機の座席番号と重なっている数字も多々ある。このために座席番号を搭乗ゲートの番号と勘違いするということが発生してしまう。
捜索の際に盲点となるのが、ゲート近くに設置されている有料のマッサージチェア。「時間があるからマッサージでも…」と思って座ったのはいいが、あまりに気持ちよくてそのまま寝てしまい、気がついたら飛行機はすでに飛び立っていたということも。捜索は可能なかぎり実施されるが、遅れが生じそうなときは打ち切られることもある。マッサージシートは見逃されやすいのだとか。
また、検査場にゲージが置いてあるために今では少なくなったが、時間的にギリギリの搭乗となって手荷物を預けるようなヒマがなく、機内に収容できないサイズの荷物をゲートまで持ち込む人もいるという。以前は地上スタッフが貨物スタッフに引き渡していたが、今は貨物スタッフが搭乗ゲートまで取りにくるように改め、これによって作業時間の短縮を図った。このあたりはスタッフからの提案によって改善された部分だという。