飛行機の定時運航を考えた際、その責任が最も重いのはパイロットであることは間違いないが、民間の定期路線ではパイロットと同じぐらいに責任の重い役職がある。気象などの情報を集め、効率の良い飛行ルートの選定を行う運航管理者(ディスパッチャー)だ。
「フライト当日の気象条件はもちろんですが、搭乗するお客様の人数や貨物の重量など、ありとあらゆる情報を集め、最適な飛行ルートを作成するのが運行管理の仕事です」と説明するのは、JALスカイ羽田事業所・オペレーション業務グループの村尾奈緒子さん。彼女もディスパッチャーの一人である。
フライト前のパイロットは飛行ルート上の風向や風速を念入りにチェックし、どの高度で飛べば定時運航ができるのか、または燃費を抑えることができるのかなどを判断。ディスパッチャーが作成した飛行計画に自らの知見を加え、最終的なルートを決定する。
天候情報は実際に飛んでいる航空機からも寄せられており、レーダーでは判断できない乱気流等の情報は他の航空会社からも提供されるそうだ。しかし、提供される情報量は各社の基準によって異なるため、先行して飛ぶJALグループの航空機から提供される情報の優先度が一番高いという。
「定時運航を考えた場合、風というのは非常に重要です。上空の偏西風の強さは夏と冬で異なります。特に冬場は向かい風の影響を直に受けて所要時間も掛かりますし、燃費も悪化します」と村尾さん。
鉄道の場合、季節による所要時間の変動はほとんどないが、飛行機の場合は風の影響を受けるため、時刻表に記載される所要時間が夏と冬で異なることも決して珍しくないそうだ。また、使用する滑走路も風向き次第で変わるため、天候の急変で予定していた進入方向が変わり、大回りを強いられて所要時間に影響する…といったこともあるとか。
それぞれの便で定時運航を心がけているが、月に20便程度を「定時性重点便」に定め、この便は特に定時性を重視している。遅れが恒常的に発生する便では「何が原因で遅れが生じるのか」を見極め、必要であれば作業手順の見直しや、ダイヤの変更まで行うなど、可能なかぎり定時運航を行う努力を欠かさないとする。