新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の古川一夫理事長は2月25日、茨城県つくば市にある産業技術総合研究所のテストコースで、今回開発したトラックの自動隊列走行技術について「世界トップレベルのものだと自信を持って言える」と強調した。
そもそも自動車の自動走行についての研究は、1950年代に米国ニューヨークで起こった吹雪の中の大事故がきっかけで始まったと言われている。日本でもその研究は後を追うように始まり、特に80年代に入ってからは建設省(現・国土交通省)が主体となって、第2東名を自動走行で車を行き来させようという壮大な計画が持ち上がった。
しかし、その計画はさまざまな経緯を経て、隅に追いやられるようになってしまった。それが2000年代に入ると、安全運転という面ではなく、省エネルギーの観点から再び注目され始めたのである。というのも、日本のCO2排出量の20%は自動車が排出しており、それをいかに削減していくかが大きな課題になっていたからだ。そこで、NEDOは2008年度から5カ年計画、総予算約44億円でエネルギーITS推進事業を大学や研究機関、民間企業と共同で実施することになった。
そして、最終年度である2013年、トラックの自動隊列走行技術を開発し、その走行実験に成功したわけだ。しかも、それは時速80km、車間距離4mという驚くべきもの。古川理事長が「世界トップレベル」というのもうなずける話だ。これによって、将来的には15%以上の省エネルギー効果が期待できるという。
同時に、現状の道路幅を維持したまま交通容量を増大させることができるので、交通の円滑化効果も見込める。さらに、今回開発した自動操舵システムや車車間通信を用いた車間距離制御システムなどは、各種の運転支援システムの高度化にも転用が可能であり、高齢化社会における安全で環境に優しいモビリティ確保にも貢献できるという。
確かにすばらしい技術と言えるが、重要なのはいかに実用化していくかである。それは、古川理事長をはじめ、NEDO関係者や今回開発に携わって人たちも十分承知しており、「世界で一番早く実用化していく必要がある」(古川理事長)
そのために、これを利用する人のことを考えたアプリケーションの開発を進めていく方針だ。「私どもとしても、できるだけ早くそれを開発して、実際にCO2の削減に貢献したい。目標はかなり高いと思うが、日本の技術を持ってすればできる」と古川理事長は力強く話していた。