【テスラ モデルS 試乗】すべてが実用性につながっている

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テスラ モデルS
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米国の電気自動車メーカー、テスラモーターズ渾身の新型車『モデルS』。ベンチャー企業でありながらその技術をトヨタに認められたテスラが、「初の本格的なEV」と謳い自動車業界に殴り込みをかける同車に、ロサンゼルスで試乗する機会を得た。

モデルSを「本格的なEV」たらしめる最大の要素は、その航続距離だ。搭載するバッテリー量を3段階で選ぶことができるモデルSだが、上級グレードの85kWhモデルでは満充電で最大500kmの走行を可能とする。EV普及の大きな壁となっている航続距離の問題を、テスラはいともたやすくクリアした。さらに85kWhモデルでベースは6万9900ドル(約600万円)と、全長5メートルに及ぶサイズ、そしてEVであることを考えれば革命的な価格であることがわかるだろう。

モデルSのボディサイズは、全長4978mm×全高1435mm×全幅2189mm、ホイールベースは2959mmと迫力あるもの。大量のバッテリーは床下に収めることで、車室や荷室を圧迫することなく「普通のセダンとして」使うことができる。さらにボンネット内もラゲージスペースとなっており、これまでの既存のガソリン車の改造が主であったEVとは一線を画したディメンジョンだといえる。

◆意のままに操れるハイパワー

クルマを象ったキーを受け取り、いざ試乗へ。ドアのメッキ部分に指で触れるとノブがゆっくりとせり出し、乗り込む前からその先進性を見せつけられる。

運転席に腰を落ち着けるやいなや、目に飛び込んでくるのはセンターに備え付けられた17インチの巨大タッチスクリーンだ。iPadが9.7インチであると言えば、その大きさがわかるだろう。センターパネルにはこのディスプレイ以外にスイッチの類いはない。ナビはもちろん、エアコン、オーディオ、サンルーフの開閉はおろか、シャシーセッティングやハンドリングの調整までも、全てこのディスプレイでおこなう。まさに未来のクルマという印象だ。

キーを持った状態で運転席に座ると、モデルSは自動的に起動し「Ready」状態になる。メルセデスベンツ風のコラムシフトをドライブに入れて、いよいよ発進だ。

試乗車は85kWhの「パフォーマンスモデル」で、421psのハイパワーバージョン。おそるおそるアクセルを踏み込むが、拍子抜けするほどスムーズに立ち上がる。ゆったりと優雅に、それでいてアクセルを踏み込む足の動きにしっかりと応えてくれる。EVならではのリニアなトルク感があり、常に必要十分な加速を手に入れることができる。

高速区間で一気に60mph(96km/h)まで加速する。600Nmのトルクが後輪に伝わり、これまでのジェントルな走りが嘘だったかのように約2100kgの車体は爆発的な加速力を見せつける。0-60mph加速は4.4秒。「ポルシェ911やBMW M5に引けを取らない」と豪語したイーロン・マスクCEOのコメントを思い出す。また、試乗時は雨だったが、ありあまるパワーをしっかりと路面に伝え、4WDなのではと疑うほど不安のない走りを見せた。バッテリーを床下に搭載したことによる低重心、さらに前48:後52という重量バランスが安定した走りを実現している。「パワー制御には自信があるのです」と同乗したテスラのエンジニアは笑う。

回生ブレーキの効きは『i-MiEV』や『リーフ』よりも格段に強い。高速走行でアクセルを離すと急ブレーキ並みの制動力を得ることができるし、ゆったりとしたクルージングであれば加減速はほぼアクセルのみで制御できる。また、回生具合はリアルタイムに調整することができ、効きを強くすればスポーティな走行もより楽しむことができそうだ。

ハンドリングの効きも3段階に調整が可能。走行中に切り替えることで、その違いをはっきりと感じることができた。「スポーツ」ではグッとステアリングが重くなり、よりダイレクトなハンドリングを味わえる。ただ同時に「電動感」も増してしまうため、若干の違和感は拭えない。ワインディングでも「ノーマル」で十分心地よいコーナリングを楽しめるだろう。

バッテリーを組み込んだシャシーに、アルミボディを載せたいわゆるセミフレーム構造であるにも関わらず、剛性感、静粛性、安定感、どれをとっても完成度は非常に高い。モデルSの走りは、もはや「ベンチャー企業が作ったEV」のそれではなく、「高級車メーカーが作ったラグジュアリーセダン」並だ。

◆最先端で実用的なクルマ

走行性能が従来のEVのそれとは別次元であることは体感できた。だが、ガソリン車も含め他のあらゆるクルマとモデルSとを決定的に差別化しているのは、前述した17インチディスプレイを始めとしたインターフェイスの部分によるところが大きい。

Googleマップを利用したナビゲーションシステムの操作感覚は、まさにタブレットPCのそれ。反応もクイックで、ストレスはない。常時インターネットに接続しており渋滞情報もリアルタイムで取得する。買い物や観光情報などを検索して情報収集した後で、ダイレクトに目的地に設定するという事も可能だ。さらに、目的地を設定した後は、指で画面を運転席側(左側)に向けてスライドさせれば、メーター内のディスプレイにもナビ画面が表示される。ちょっとした操作に新しい遊びを盛り込むのは、さすがエンターテイメントとITの国生まれといったところ。

また、17インチディスプレイは上下2画面に分割することも可能。上をナビ、下をエアコンやオーディオ、というように普通のクルマらしく設定することもできるし、全画面を車両制御表示にすることもできる。入れ換えもワンタッチでできるため、運転中でも安全に操作が可能だ。現在はナビ、オーディオ、インターネットといった基本的なアプリケーションしかないが、今後は様々なエンターテイメント要素を盛り込んでいくことも検討しているという。


充電インフラすら必要ない圧倒的な航続距離、最大7人乗車が可能な室内空間(米国のみ)、自室にいるかのようなインターネット環境、圧倒的なパワーとそれを思うままに操ることができるインターフェース。これら全てはモデルSを「実用的なクルマ」として成立させている。家につながる、地域につながる、スマートフォンとつながる、など様々な車外での付加価値が魅力だと謳う従来のEVとは全く別のアプローチで、最先端でありながらクルマそのものの価値を極限まで追求し、それを実現しているという点を評価したい。
《宮崎壮人》

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