ミニバンの売れ筋ナンバー1モデルである日産『セレナ」に「Sハイブリッド」が設定され、バリエーションの大半がSハイブリッドになった。
以前からセレナに搭載されるECOモーターを使ってエネルギー回生発電量と出力を高めて補助原動機化するとともに、蓄電容量を増やすためにサブバッテリーを追加したシンプルでコンパクトなハイブリッドシステムだ。
システムのすべてをエンジンルーム内に収めることができ、ミニバンならではの室内空間の広さや使い勝手の良さをスポイルすることなく、燃費を向上させたのが良い。価格アップも控えめな水準に抑えている。
逆にシンプルなハイブリッドのため、燃費の向上幅はさほど大きくない。リッター15.2kmという数値は悪くはないが際立って良いというほどではない。普通のハイブリッドとSハイブリッドは違うのだ。
車両重量との関係から免税扱いになるのがSハイブリッドの良いところ。免税分のほか、グレードによって標準装備化された電動スライドドアなどを考慮に入れると、多少の価格アップがあったものの、むしろ割安になったとの見方もできる。
走らせた印象はこれまでのセレナとほとんど変わらなかった。モーターが支援するのは発進直後のわずかな時間だけなので、走らせていてそれを感じることができなかった。というか、Sハイブリッドであることを意識せずに走らせることのできるクルマである。
Sハイブリッドは走りを良くするシステムというより、減速時のエネルギー回生を強めて電気をため込み、それを各種の電装品に使うほか、アイドリングストップ時間の延長に使うのがメインと考えたら良い。その結果、エンジンによる発電を少なくして燃費を向上させるシステムなのだ。
セレナは以前からデキの良いアイドリングストップ機構を備えている。スターターモーターを使わずにECOモーターを使って始動するため、再始動時の振動や騒音が小さいのだ。その良さはSハイブリッドでも変わらない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。