シトロエンのミニバン『C4 ピカソ』は、日本では2007年5月にデビューし、2011年2月に搭載エンジンを変更している。C4 ピカソは、その名前が示すように、『C4』の基本プラットホームを採用して作られたクルマだ。といってもホイールベースは120ミリも延長されていて、ボディも全長が260ミリ長くなるなど、C4に比べるとひと回りというか、ふた回りくらい大きい。ミニバンらしい居住空間のためには大きめのボディも必要だが、4590ミリの全長はともかく、1830ミリの全幅や5.7メートルの最小回転半径などを考えると、まずはこのサイズ感に納得できるかどうかがポイントになる。C4ピカソはインテリア回りのデザインがとりわけ個性的だ。センターに配置された独特のメーターパネルや、左側のドア近くに配置されたエアコンのコントロールパネルなど、ほかのクルマにはない独創的なデザインが採用されている。シフトレバーはなく、ステアリングの向こう側にシフトモードセレクターが装備される。積極的にギア操作をしたいなら、やはりステアリングの裏側にあるパドルシフトを使うことになる。搭載エンジンはプジョー・シトロエングループの車種に幅広く搭載されている直列4気筒1.6リットルの直噴ターボ仕様。BMWとの共同開発によるこのエンジンは、ターボラグを感じさせないスムーズさや、低速域から盛り上がるトルク感など、とても好感の持てるエンジンとして定評がある。ボディが大きいためにC4ピカソの車両重量は1600kgとかなり重い。でも1.6リッターエンジンの発生する110kW/240N・mのパワー&トルクは、ボディに対して十分に見合っている。エンジンは良いが、もうひとつの印象を受けるのが6速のEGS(エレクトロニック・ギアボックス・システム)と呼ぶセミAT。普通に加速していくとシフトアップするたびにトルクが抜けてラグが生じるからだ。マニュアルモードにしてパドルを積極的に操作すればまあ何とかなるし、クラッチペダルを踏まなくてもエンストしないマニュアル車だと思えば許せる面もあるが、物足りなさがあるのは事実である。室内の居住空間は十分に広く、それぞれのシートもしっかり作られていて、大人7人がしっかり座れるのはさすがにヨーロッパ製のミニバンだ。乗り心地も含めて快適そのものの空間である。逆に日本車に比べたら、シートアレンジは多彩とはいえないし、アレンジの操作性も良いとはいえない。操作はけっこう力業といった感じになる。本当に多人数乗車を必要とするなら、C4ピカソのようなすべての席がしっかり作られたミニバンを選ぶべきだろう。300万円台に設定された価格は、輸入車のミニバンとしてはまずまずリーズナブル。充実した安全装備が標準で装備されている。■5つ星評価パッケージング:★★★インテリア/居住性:★★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★オススメ度:★★★松下宏|自動車評論家1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。