ドコモ決算、spモード不具合に陳謝も

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決算発表の模様。まずspモード不具合のお詫びから始まった
  • 決算発表の模様。まずspモード不具合のお詫びから始まった
  • NTTドコモ 代表取締役社長 加藤 薫氏
  • 2012年度第1四半期決算のポイント。利益達成率も堅調に推移しており、まずまずの滑り出し
  • 携帯電話の総販売台数の推移。517万台で11.2%増を記録。
  • MNP転入出は、依然として転出増で厳しい状況だが、料金など各種施策により、改善の兆しも見える
  • 2012年度の事業運営方針と注力ポイント。
  • シニア層をターゲットにした「らくらくスマートフォン」も初登場。
  • Xiの推進。2012年度末までに基地局2万1000局、カバー率70%で、1000万契約以上を目指す

 27日、NTTドコモは2012年度第1四半期(2012年4月~6月)の決算報告を発表した。新社長に就任した加藤薫氏は決算報告の前に、昨日起きた「SPモードの各種設定」に関する不具合について陳謝した。

 「今回の不具合の件を大きく受け止めている。いま1000人程度に影響が出ており、皆様に大変ご迷惑をおかけした。深くお詫びする。サーバ機能向上のためのプログラムに問題があったようだが、今後このようなことが二度と起こらないように、原因究明と再発防止に向けて努力をしている」と述べた。記者からの質問でも、この不具合に関する質問が集中した。SPモード・メールについては「以前から使いにくい」という指摘を受けており、それに関連する質問もあった。加藤氏は「エリアごとにスピードに偏在があるため、ネットワークのチューンアップなどによって、1つずつ問題を解決していく」と説明した。

 さて、本題の2012年度第1四半期の決算だが、営業収益は1兆723億円(前年同期比2.4%増)、営業利益は2626億円(1.9%減)、純利益1643億円(3.5%増)となり、「年間利益目標9000億円の達成に向けて、まずまずの滑り出しになった」(加藤氏)という。営業利益をみると、前年同期比より1.9%減(51億円減)となっているが、純利益は着実に伸びている。営業利益が減少した要因は、音声収入が減少したことが大きいようだ。ただし、一方でパケット収入が9%ほど伸びており、音声収入の減少分を相殺する形となった。

 携帯電話の総販売台数は517万台(11.2%増)で伸びている。特にスマートフォンの台数が249万台と昨年より2倍近く(92%)増えた。すでに7月現在で累計350万台を超えており、その勢いが加速している。量販店におけるスマートフォンのシェアも5割近くが同社のシェアになっているという。Xi契約数も332万台(49.1%増)と順調だ。純増数をみると今期は27万契約で、解約率は0.74%。プリペイドデータプランの影響を除くと純増数は40万契約、解約率は0.67%になる。MNP転入出については、依然として転出増で厳しい状況になっている。「夏モデルのラインナップ、新料金などを駆使して戦っていきたい」と加藤氏。実際にさまざまな割引プランを打ち出しており、ここにきて改善の兆しも見える。先ごろ発表した夏モデルの強化によって、第2四半期以降も改善に取り組んでいく方針だ。

 加藤氏は「NTTドコモは今年7月で営業開始から20周年を迎えた。さらにスピード感をもって、持続的な発展に向けてチャレンジしていきたい」とし、今年度の事業運営方針について説明した。大きな方針は「スマートフォン、Xiの販売促進による純増拡大」「クラウドサービスの提供」「安心・安全施策の強化」「モバイルをコアにした総合サービス企業への進化」の4つだ。

 まず「スマートフォン、Xiの販売促進については、端末ラインナップとユーザーセグメントに対応する料金施策がポイントとなる」と強調。夏モデルは全17機種のラインナップが発表され、そのうち11機種がXiに対応。NOTTVも5機種で利用できる(前モデル2機種を加えて合計7機種で対応)。また防水、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線など、従来からニーズの高い日本独自の機能も継承している。スマートフォンについては、この8月からシニア向けの「らくらくスマートフォン」と「らくらくパケ・ホーダイ」を提供。人気の高い「らくらくフォン」のスマホ版にあたるものだが、これによりさらに幅広いユーザー層へのパケット利用を促進したい意向だ。

 Xiの推進に関しては、「第1四半期の契約者数も332万と順調に推移しており、第4四半期までに1000万人以上を目指す」という。エリア拡大のため、基地局も12月までに2万1000局を設置する予定で、エリアカバー率70%を目標に進めているところだ。また利用料や形態に応じて多彩なプランを用意。中利用者向け「Xiパケ・ホーダイダブル」、高利用者向け「Xiパケ・ホーダイフラット」のほか、中利用者向けに月3Gまでの利用が可能な「Xiパケ・ホーダイライト」を加えることで、契約者の拡大を狙う。ほかにも8月31日まで「家族セット割」を提供。家族で2回線以上(全機種対象)を同時購入した場合に、1回線あたり1万円の割引も実施する。

 2番目の柱になる「クラウドサービスの提供」では、すでに各種サービスの提供、あるいは発表が行われている。たとえば「しゃべってコンシェル」は、サービス開始から約5ヶ月で300万ダウンロード、約1.3億アクセスを記録した(2012年7月25日現在)。新たに知識ベースのQ&A機能が追加され、より利便性も高まったことが人気に拍車をかけている。「今後は、しゃべってコンシェルを利用し、我々のdマーケットを通じてeコマースヘの展開も考えている」という。

この6月からは「メール翻訳コンシェル」を提供。さらに10ヶ国語に対応した「通訳電話サービス」も試験的に提供しており、今秋の商用化を目指している。続いて8月からは「フォトコレクション」も提供する予定だ。これは高度な画像識別機能によって顔などを認識し、写真を自動整理して、ドコモのクラウドへ保存できるサービス。このほかにも「今冬から電話帳やspモードメールのマルチデバイス化を進め、クラウドによって複数のデバイスから電話帳やメールへのアクセスを可能にする」という。電話帳の個人プロファイル情報を活用し、付加的なサービスの広がりも考えていくそうだ。

 3番目の「安心・安全施策の強化」に関しては、「スマートフォンあんしん遠隔サポート」の利用拡大が挙げられる。操作などで分からないことがあったときに、音声案内に加え、画面共有によってオペレータがユーザーの携帯電話の操作しながら教えるサービスだ。すでに13万契約を突破しているが、夏モデルでは全機種が対象になった。「ドコモあんしんスキャン」も機能拡充が図られ、セーフブラウジング機能を提供。既存のウイルススキャン機能のほか、フィッシング詐欺やワンクリック詐欺などを防止し、安心・安全性を高めた。またWi-Fiも利便性を向上すべく、アクセスポイントを拡大させる方針だ。「2011年末までに1万4200スポット、2012年9月までに7万スポット、2012年末までに12万から17万スポットを目指す」という。

 NTTドコモは、携帯電話のサービス企業ではなく、「モバイルをコアにした総合サービス企業への進化」を目指しているようだ。これが4番目の柱になる。加藤氏は「戦略的パートナーシップによる新領域の開拓と、海外事業の強化を進めている」と説明する。メディアコンテンツ事業では、NOTTVを推進しており、直近で9.5万まで契約者も増えた。放送エリアも順次拡大していく予定だ。コマース事業では、dマーケットとの連携を前提に、食品宅配事業の「らでっしゅぼーや」に経営陣を派遣。タワーレコードも7月に子会社化し、dマーケットでのCDやDVD販売などにつなげる。

 さらに目新しい分野としては、メディカル・ヘルスケア事業として、オムロンヘルスケアとのジョイントベンチャー「ドコモ・ヘルスケア」を7月に設立したばかりだ。「健康管理サービスをベースに、本格的にヘルスケアサービス市場を立ち上げ、設立5年で100億以上の売り上げを目指す」と鼻息も荒い。海外のサービスプロバイダーとの連携も急いでいる。2012年以降、欧州最大規模のモバイルサービス提供事業者「ボンジョルノ」の株式公開買い付けを実施したり、中国最大手のインターネット検索事業者「百度」との合弁会社への出資も完了した。

 海外事業者との戦略的パートナーシップの構築にも積極的だ。Telefunica、kpn、VimpelCom、ROGERS、Telstra、SingTelといった海外キャリアやプラットフォーム事業者とアライアンスを組み、グローバルなM2Mサービスプラットフォームを推進中だ。また、アジア13の諸国と地域、11の移動通信事業者で構成されるCONEXUS MOBILE ALLLIANCEや、ボーダーフォンと協業し、法人営業・国際ローミング分野で一元的なソリューションを提供していくという。

 このところNNTドコモは、純増数や解約数などで競合他社と比べて旗色が少し悪くなってきているようだが、総合サービス企業への進化を目指す新社長・加藤氏の旗振りによって、新たな巻き返しが成功するのか、注視して見守っていきたい。

ドコモ決算発表、4つの方針と新施策で巻き返しを狙う!……spモード不具合で陳謝も

《井上猛雄@RBB TODAY》

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