『DS4』はその名前の通り『C4』をベースにデザインに特化したモデルで、一見するとSUV的なデザインだが、ルーフラインは流麗なクーペ風のものとされ、クロスオーバー感覚のクルマに仕上げられている。
ぱっと見ただけでは2ドアに見えるようなデザインだが、実際には4ドア車。ドアノブはかつてアルファロメオ『156』が採用したのと同じようにドアガラスの後端部分に設けられていて、離れた位置から見るとドアノブもドアもない2ドア車に見えるのだ。
デザインを優先させたのは良いが、ドアの形状が妙に出っ張った形になっていて、ドアを開けたときにその出っ張り部分に頭をぶつけそうになる。また、リヤドアはガラスが開かない“はめ殺し”タイプである。
ガラスをパーティションで仕切ったらデザインが台無しになると考えたのだろう。実質的に2ドア車として使って欲しいという意図で作られたと考えたら良い。それでも後席の空間はそれなりに広い。
インテリアデザインは基本的にC4と共通だが、ダッシュボードに柔らかな手触りのスラッシュスキンを採用するなど、上質さにこだわった部分がある。ウインカー音などを4種類に設定できるのはC4と同じだ。
EGSのポジション表示やワイパーなどが左ハンドル用のままになっているのは、右ハンドル国の日本のユーザーとしては物足りなさを感じる部分である。
搭載エンジンは1.6リットルのターボ仕様で、チューニングによって2種類の仕様がある。115kW仕様は6速EGSと組み合わされ、147kW仕様は6速MTと組み合わされる。C4の上級グレード用がDS4のベースグレード用になった形で、このあたりにもプレミアムモデルであることが示されている。
「シック」に搭載される115kW仕様のエンジンもDS4を走らせるには十分という感じ。同じエンジンを搭載したモデルで比べるとC4よりもDS4のほうがわずかに軽いのだ。
セミATの6速EGSは例によって変速時のトルク抜けが気になるものの、従来に比べると洗練の度合いを増してショックが小さくなった。ドライバーが自らの意志でパドルを操作して変速すれば、トルク抜けもあまり気にならない。
スポーツシックに搭載されるエンジンは147kW(200ps)仕様で元気いっぱいという感じ。シフトレバーはストロークも節度感も小気味の良いもので、いかにもスポーティな走りを楽しみたくなる仕様だ。
今どきの日本ではマニュアル車に乗る人は少ないが、マニュアル車に乗りたい人が選べるクルマはそれ以上に少ないので、ガチガチのスポーツモデルではなく、マニュアル車で普通にスポーティに走りたい人向けには稀少な1台になる。
6速EGSを含めてトランスミッションはある意味でDS4の弱点ともいえるが、スポーツシックはマニュアル車を求める人にジャストフィットするクルマでもある。
乗り心地はグレードによる違いが明確だった。17インチタイヤを履くシックの足回りはシトロエンらしい快適な乗り心地を味わわせてくれるが、18インチタイヤのスポーツシックはけっこう硬めの印象。シトロエンらしさを求める人にはシックのほうがお勧めできる。
シックとスポーツシックではパワートレーンの違いのほかシートがレザーになることもあって36万円の価格差が設定されている。シックでも快適装備の充実度は十分なレベルにあるので、普通に選ぶならシックだと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。