発足から42年、日本自動車研究所の役割とその設備

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シャシーダイナモによる排ガス試験
  • シャシーダイナモによる排ガス試験
  • 現在のつくば研究所の敷地
  • JARIの事務棟にある日産「ハイパーミニ」と「ダットサン フェートン」
  • つくばエクスプレスが通ったころの日本自動車研究所。写真上部を横切る線路がつくばエクスプレスだ
  • 二輪の排ガス試験
  • 谷田部高速試験場の一部舗装を残した「メモリアルバンク」
  • 全方位視野ドライビングシミュレータ
  • 衝撃試験装置

いまから42年前の1969年に自動車に関する総合的な研究を行う組織として発足した財団法人、日本自動車研究所(JARI)。2003年には日本電動車両協会(JEVA)と財団法人自動車走行電子技術協会(JSK)とを統合して、新生JARIが発足した。

現在は東京と茨城県つくば市(研究所)、城里町(テストコース)の3カ所に拠点をもち、自動車に関する研究のほか、規格化・標準化へ向けた協力や提言、調査業務などをおこなっている。なお政府の公益法人改革により2012年の4月から一般財団法人に移行することが決まっている。JARIは中立機関として、自主研究の他に、各自動車メーカー/部品メーカーなどからの委託された調査・研究、国や外郭団体(NEDOなど)からの依頼を受けた調査業務などを中心におこなっている。

◆つくばエクスプレスで「谷田部テストコース」が移設

今回つくば研究所を訪れ、研究の概要と施設を取材した。

つくば研究所には、かつては谷田部高速試験場とよばれる5.5kmの高速周回路が存在していた。自動車雑誌などでは「谷田部テストコース」と呼ばれ、最高速をはじめとする車両性能テストのメッカだったが、つくばエクスプレスの建設により周回路を含む高速試験場敷地の大部分を売却。高速周回路は、茨城県城里町の「城里テストセンター」として2005年に移設オープンした。

現在、つくばには「衝突試験場」「HYGE衝撃試験装置」「ダイナモメーター設備」「全方位視野ドライビングシミュレータ」、そして「模擬市街路」という5つの設備がある。これらの多くは2005年以降、新たに導入された評価機をそろえており、日本でも有数の実験施設だ。

◆2005年以降に主要設備を刷新

2005年4月に完成した衝突試験場は、日米欧で安全基準が大幅に強化されるなか、多様な衝突安全評価のニーズに対応すべく建設された。4ヶ所の衝突エリアを持ち、上空から見ると助走路が放射状に伸びていることが確認できる。乗用車、二輪車、トラックなどの衝突試験をはじめ、ムービング・デフォーマブル・バリア(MDB)などを用いた衝突試験および交通事故の再現試験などがおこなわれる。

HYGE衝撃試験装置は、車両の衝突現象を台上でシミュレートするための装置。おもに衝撃力を発生するジェネレータと、試験車に相当する台車で構成されており、スレッドを高圧で打ち出すことにより衝撃を加える。チャイルドシートやシートベルトなどの安全装置の稼働実験などに用いられることが多い。

ダイナモメーター設備は、排出ガス認証の予備試験や、排ガス浄化装置の評価試験、燃料消費率、動力性能などさまざまな用途に利用されている。大型エンジンダイナモメーター、大型シャシーダイナモメーター、そして二輪車シャシーダイナモメーターの3機があり、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を測定するための希釈トンネルもある。

全方位視野ドライビングシミュレータは、360度球面スクリーンによる広い視野と市街地のから高速道路の走行シミュレートまで、さまざまなシチュエーションを再現することができる。動揺装置はヘキサポッドとターンテーブルで構成されており、実際の走行とほとんど変わらない走行場面をシミュレートできる。キャビンの交換や走行プログラムのカスタマイズも可能だ。2009年完成。

模擬市街路は、その名の通り、実際の市街路を再現した構成になっており、信号機や横断歩道、クランク、そして合流など、60km/hまでのさまざまな低速走行場面を想定した評価・実験がおこなえる。衝突実験場エリアを取り囲む東西500m・南北700mの敷地に総延長約4500mの実験路が敷かれる。完成は2008年だ。

《北島友和》

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