見直されるパリ第2空港 |
シャルル・ドゴール空港と並ぶパリの空の玄関・オルリー空港ターミナルがオープン50周年を迎え、2011年7月に記念イベントが行なわれた。
飛行場としてのオルリーの起源は1910年代にまで遡る。しかし民間空港としての本格的なスタートは1952年にエールフランス航空が今日でいうハブ空港を、同じくパリ郊外のル・ブルジェ空港から移転したのがきっかけだった。ちなみにル・ブルジェ空港は、現在でもチャーター機の発着や、有名なパリ航空ショー会場として使用されている。
そして50年前の1961年2月、ド・ゴール大統領臨席のもとで、現在の南ターミナルがオープンした。
ターミナルは当時格好の人気スポットとなった。搭乗客以外にも多くの人々が押しかけ、入場者数はヴェルサイユ宮殿やエッフェル塔を上回る年もあったという。それを象徴するように、『ナタリー』で知られる有名なシャンソン歌手・故ジルベール・ベコーは、『日曜はオルリーで』と題した曲を歌っている。
1974年にシャルル・ドゴール(CDG)空港が開港すると、オルリーは主に国内、欧州、北アフリカ、中東、そしてフランス海外領土便の空港としての使命を果たすようになり、今日に至っている。
滑走路は3本。2010年の年間乗降客数は約2500万人で、着陸回数は約21万回だった。参考までに国土交通省による成田空港の2009年乗降客数は、約2888万人、着陸回数は約9万4200回である。
日本に住む人にとってはCDGに比べて馴染みの薄いオルリーだが、ここ数年は、欧州で成長著しい格安航空会社のパリ発着拠点としても活用されている。
主にCDGが中心の米国・アジア路線への乗り継ぎには不便なものの、パリ市街へのアクセスは極めて良好だ。空港バスの場合、CDGが約50分も所要時間がかかるのに対し、オルリーは約30分で到着できる。CDGに向かう高速道路の渋滞は年々激しくなっているから、さらにオルリーの“有り難さ”が実感できるようになった。
さらに、CDGは拡張が続けられ、今や9つのターミナルを擁するようになった。最も遠く、欧州の近距離路線が発着するターミナル2Gに到着した場合、パリ市街行き交通機関へは、一度連絡バスに乗って別のターミナルまで行かなければならない。対して、CDGに比べて小規模のオルリーは南・西ターミナルとも、預け荷物受け取り場から空港バスにアクセスできるまでの距離が短い。そうしたさまざまな要素から、近年オルリーを再評価するパリ市民は少なくない。
ところでオルリー空港では、50周年に合わせて大々的な改装工事が行なわれ、スーパーマーケット『モノプリ』系列のコンビニエンス・ストアである『デイリーモノップ』など、一般市民に馴染みのあるテナントが次々と入った。
しかしながら、500ミリリットルのミネラルウォーターが日本円にして200円以上、サンドウィッチが同じく円にして約500円と、市価の約2倍するのは、まだまだ旧来の“空港値段”といわざるを得ない。外国人利用者のパリに対する第一印象に必ずしもプラスに作用していない。
また、著名モデルや女優を表紙に使った空港会社発行の無料PR誌が、あまり手に取る人もいないまま大量に置かれていたりする。世界の空港にありがちな問題は、オルリーも同じである。
大矢アキオの欧州通信『ヴェローチェ!』 |