【インディ500】100周年記念レースは最後の最後、大波乱の大逆転

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インディ500
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  • ウェルドン(インディ500)
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  • 佐藤琢磨(インディ500)
  • 佐藤琢磨(インディ500)
  • インディ500、決勝スタート

5月29日、メモリアルディ(戦没将兵追悼記念日)の休日の日曜日、今年もインディ500の決勝レースが開催された。

今回は100周年(開催は95回目)の記念大会とあって、第1回インディ500のウイニングマシンを始め100年の歴史を彩ったマシン達に、アル・アンサー、ボビー・アンサー、ジョニー・ラザフォード、マリオ・アンドレッティらのレジェント達が搭乗してのパレードラップ、デビッド・フォスターのピアノ生演奏に乗せてシール、ケリー・クラーソンが国歌斉唱を行い、上空をステルスがフライオーバー等々、レース前イベントも常にも増して豪華絢爛。1世紀の伝統を思わせる趣向がこらされたものとなった。

正午を回ると33台のマシンのエンジンに一斉に火が入った。グランドスタンドを埋め尽くす超満員のレースファンが見守る中、ツー・バイ・ツーのフォーメーションラップから200周・500マイル先の栄光のゴールを目指す伝統の戦いの火蓋が切って落とされた。

レース序盤は、会心のスタートを決めたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)やオリオール・セルビア(ニューマンハース・レーシング)と、ポールポジションからアレックス・タグリアーニ(サム・シュミット・モータースポーツ)らが、激しい先頭争いをしながら引っ張る展開。ダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)、ダン・ウェルドン(ブライアン・ハータ・オートスポーツ)やトニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー)ら、近年のアメリカンフォーミュラーを牽引するドライバー達も、上位を伺う位置へと着々とポジションをあげてきた。

一方、10番手からスタートした佐藤琢磨(KV レーシング・テクノロジー)は、セッティングが決まらないマシンに苦しみつつ周回を重ねたが、大混戦の中位集団の中で17番手まで後退。そして21周目、ターン1にフルスロットルで侵入したところに、イン側に他のマシンが飛び込んできた。スポッターとのコミュニケーションの不具合により、接近するマシンを確認出来なかった佐藤のマシンは、急激にアクセルを戻したとたんに挙動を崩しそのままウォールに強打。無念のリタイアとなった。

その後、レースは4分の3となる150周近くまで大きなアクシデントも発生せず、クリーンに進行していたが、148周でマシンの不調でズルズルとポジションを下げていたポールシッターのタグリアーニがクラッシュ。続いて、158周にはライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)とタウンゼント・ベル(サム・シュミット・モータースポーツ)がコース上で接触。揃ってターン1のウォールにヒットを喫するなど、終盤にさしかかりレースはにわかに大波乱の様相を呈してきた。

残燃料が微妙になるこのタイミングでの長いフルコースコーション。ここで給油を行うチーム、再びのイエローコーションを伺いステイアウトの作戦に打って出るチーム等々、大詰めを目前にピットストラテジーはチーム毎、マシン毎にさまざまなものとなった。

レース再開後、179周にはステイアウトを選んだダニカ・パトリック(アンドレッティ・オートスポーツ)がトップに立ち、会場をわかせたが189周目でピットイン。続いてリードラップを走行したベルトラン・バゲット(レイホール・レターマン・ラニガン)も燃料が持たず、残り2周のところでピットインした。ここでトップに躍り出たのはJ. R. ヒルデブランド(パンサー・レーシング)だ。しかし最後の最後に大波乱が待っていた。

すでにピットではクルー達が両手をあげてルーキーにして大偉業を成し遂げたウィナーを迎える態勢にはいっていた最終週、最終ターン。ヒルデブランドは、周回遅れのチャーリー・キンボール(ノボ・ノルディスク)をアウトからテイクオーバーしようとしたところで、マーブル(タイヤかす)に乗り、態勢を崩すとそのままウォールにヒットしてしまったのだ。

その間、後方にいたウェルドンがゴールラインに飛び込み、チェッカードフラッグ。ヒルデブランドの4号車はクラッシュを喫しつつも、ゴールラインを通過し2位。3位には29番グリッドから大きく躍進したグラハム・レイホール(チップ・ガナッシ・レーシング)が駆け込んだ。

チャンピオンのタイトルも手にしたことがあるウェルドンだが、今季のシリーズ・フル参戦は叶わず、今回のインディ500はブライアン・ハータ-オートスポーツからのスポット参戦だ。ウェルドン自身にとっては2度目、チームにとっては初めてのインディ500の勝利。恒例のミルク・ファイトの場にかつてはチームメイトとしてシリーズを戦ったチーム・オーナー、ブライアン・ハータを呼び上げたウェルドンは、共にミルクで勝利を祝い、感涙にむせんだ。

ダン・ウェルドン コメント:「チームはすばらしいマシンを用意してくれました。今シーズンはフル参戦はできませんでしたが、インディ500には最高の体制で挑むことができました。100周年の記念すべきレースで、強豪チームを相手にスポット参戦のチームが勝てたことはまさにシンデレラ・ストーリー。本当にうれしいです」

J.R.ヒルデブランド コメント:「終盤は燃費もタイヤも厳しい状況でした。最後のターンにさしかかるところで、スポッターから後続が迫っていることを知らされ、目前にいた周回遅れのマシンを先に行かせることでスローダウンしたくないと考えました。大きく減速してでも彼の後ろにつくべきでした。レース中はアウト側からパスできていたし、この時も大丈夫だと判断したのです。200周を経過してアウトはマーブルが溜まっており、ここに乗ってコントロール不能に陥ってしまいました。今年のインディ500で優勝のチャンスに恵まれるとは考えていませんでした。それを実現してくれたチームのことを思うと、この結末は本当に悔しいです」

グラハム・レイホール コメント:「インディ500で、3位でゴールできたことは大きな喜びです。後方からのスタートでしたが、26台ものマシンを抜いてフィニッシュできたこともとても嬉しく思います。これまで勢いを手に入れたいと考えていましたが、今日それを手に入れることができたと思います。この勢いシーズンを進めていきたいです。素晴らしい仕事をしてくれたチームクルーたちを誇りに思います」

佐藤琢磨 コメント:「誰かが並びかけてくるという情報がスポッターから伝わっておらず、イン側に車がいるのを知りませんでした。すでにターン1にフルスピードで進入していたのにアクセルを戻すことになりました。ラインを外れるとグリップがまったくなくなり、マシンはアウト側に向いてしまい、なすすべもなく壁に一直線にぶつかってしまいました。マシンのハンドリングは決してよくはなく、スピードもありませんでしたが、まだ序盤でしたし、ピットストップでフロントウイングやタイヤの空気圧変更を行えば昨年以上にポジションを上げてゆくことができると考えていました。本当に残念です」

《ケニー中嶋》

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