初代『レガシィ』に「E型」エンジンが初搭載されて以来、21年ぶりの全面新設計となったスバルの主力水平対向エンジン「F型」。次の10年を乗り切るエンジンのベースとするため、設計にあたってはエンジンの総合効率や出力特性、騒音・振動といった基本性能の伸びしろを拡大させることを徹底的に意識したという。
日本市場でのF型エンジンのトップバッターとなる2リットル水平対向4気筒「FB20」が搭載されるのは、コンパクトSUV『フォレスター』。実際にドライブしても、エンジンの基本資質の向上は体感できる。従来型エンジンと大きく異なるポイントとして挙げられるのは発進時、加速時のエンジンフィールだ。
旧型のE型水平対向4気筒も改良に改良を重ねられており、それなりにスムーズに回転が上がっていくのだが、F型はアクセルを踏み込んだときの微妙な引っ掛かり感やゴロゴロ感がなく、いかにも内部摩擦損失を減らしましたという感じで、シュルルル…とノーストレスで回転が上がるフィーリングは気持ち良いものだ。中速域でカリカリというカムがタペットを叩くような小さな音が聞こえたが、大した問題ではないだろう。
「摩擦損失の低減はもちろんですが、一番力を入れたのはやはり燃焼です。ごく低回転から高回転まで、しかも全開時やJC08モード時だけでなく、あらゆるスロットル開度でしっかりとした燃焼状態を維持できるようにすることは、燃費の向上だけでなく、ドライバーがスロットル操作でイメージ通りの加速を得られるといった、走りの質を高めるうえでも重要だと考えたのです」
エンジン設計を担当したスバル技術本部主査の白坂暢也氏は語る。このFB20型エンジンは、エンジンリニューアルの序の口。直噴エンジン化、ハイブリッド化などのアップデートが順次行われるという。また、ボルトオンでは直噴ターボ化は難しいそうだが、シリンダー内径を縮小してシリンダーブロックやスリーブの肉厚を増やせば、ターボを用いたダウンサイジングエンジンとすることも可能であろう。実際、ターボ化も検討項目に入っているという。
旧型比で燃費10%アップ、出力は同等という新エンジンは、数値的には派手な印象はないが、スバルの今後の環境技術の柱となるだけに、その作り込みには並々ならぬ力が注がれている。試乗の際にはアクセルの踏み増しへのトルクの追従性など、その仕上がりぶりについても意識すると面白いだろう。