【三菱ふそう 新型パワートレイン】30年間の研究、理想のトランスミッション

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DUONIC(デュオニック)
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三菱ふそうが発表した新型パワートレインの目玉の一つが、「DUONIC」(デュオニック)。これはデュアルクラッチと自動変速機構を備えたMTで、VWのDSG、BMWのDCTなどと基本的には同じ構造の2ペダルMTだ。

三菱ふそうは積載能力をカバーしながら、運転操作を簡素化してドライバーの疲労を軽減するために、ATと並行して2ペダルMTの開発を続けてきた。それは今から30年前まで遡ることが出来ると言う。三菱ふそうの駆動設計部 小型駆動系設計担当マネージャーの白沢敏邦氏は、そのほとんどに関わってきた、小型トラックのトランスミッションにおいてはスペシャリストと言っていい人物だ。

従来、三菱ふそうだけでなく、日本のトラックメーカーはコンベンショナルなMTのクラッチと変速操作を自動化するロボタイズドMTの熟成に力を注いできた。けれども、その裏では様々なトランスミッションの可能性を探る研究を続けていた。その大本命がデュアルクラッチ式の2ペダルMTだったのである。

4P10型エンジンとは異なり、完全に自社開発されたデュオニックは、非常に長い時間をかけて作り上げられている。それはVWやザックス、ゲトラークといった先行するメーカーの特許をクリアする必要もあったからだ。「それでもデュアルクラッチMTは、かなり昔に基本的な技術が確立されていたので、細かい部分に各社のノウハウが込められているんです」(白石氏)。それだけにデュオニックは独自の設計開発と胸を張れる内容だ。

ユニークなのは、湿式クラッチの潤滑と断続の制御、それにシフト制御にはATFを使い、ギアボックス自体の潤滑にはギアオイルを使うという2種類の潤滑油を使い分けているところだ。乗用車用では通常のMTでもATFを用いるケースが珍しくないし、デュアルクラッチMTもATFに準じた作動油を用いているメーカーが多い。しかし何tもの荷物を運ぶトラックの場合、MTのギアをATFで潤滑するのは、さすがに極圧性能の面で難しいからだ。

伝達効率や駆動損失を考えれば、クラッチは乾式の方が有利だが、発進や変速をスムーズに行ない、なおかつクラッチ自体の摩耗を抑えるには湿式の方が優れている。ATのクリープに近い感覚の半クラッチを実現しながら、トラック全体の寿命にほぼ近い30万kmという耐久性を実現したのは湿式ならでは。オイル交換のみというメンテナンスフリー化を図っている点でも従来のMTより優れている。デュアルクラッチとしたことで変速ショックがほとんど解消されたことから、駆動系全体の耐久性も向上することになったようだ。

途切れない加速により同じエンジンでも加速時間の短縮が見込めることから、カタログデータでの燃費だけでなく、実燃費の向上も期待できる。さらに加速が途切れることで、変速後の加速でのエンジン負荷が高まることでPMが増えてしまうことも防止できる。

あらゆる意味で小型トラックのトランスミッションとして理想的とも言えるデュオニック。これからは、大型トラックやバスのトランスミッションさえもデュアルクラッチがトレンドとなりそうだ。

《高根英幸》

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