【池原照雄の単眼複眼】車検獲得にも狙い---三菱の保証延長

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国内最長の10年10万kmに

三菱自動車工業が6月5日から保証期間を国内メーカーではもっとも長くした新保証制度を導入した。リコール問題以降、低迷している国内販売をテコ入れするとともに、車検整備の獲得による販売会社の体質強化にもつなげる。

三菱自動車が始めたのは「三菱愛着プロジェクト」というサービスで、保証期間の延長のほか、内外装や助手席の改装などが割安にできるメニューなどをセットにしている。最大のポイントはエンジン、ブレーキ、変速機といった基幹部品を対象にしている「特別保証」の延長だ。

従来は日本メーカー各社と同じ新車購入後「5年または10万km」だったが、「10年または10万km」とした。エアコンなど基幹部品以外の「一般保証」は「3年または6万km」のままとしている。

◆平均使用「11年超」の実情に対応

三菱の特別保証の延長は、6月以降に年式が切り替えられる車種に順次適用するほか、発売済み車種では新型『RVR』と電気自動車の『i-MiEV』も対象とした。i-MiEVの2次バッテリーについては「5年または10万km」とする。10年保証には5年目(購入後2回目)以降の車検ごとに、24か月定期点検に相当する「保証延長点検」を受けることが条件となる。

国内では乗用車の平均使用期間が11年を超えており、三菱の特別保証延長は使用実態に対応したものとして自動車ユーザーからは歓迎されることになるだろう。1990年代初頭には乗用車シェアで3位につけていた三菱だが、今年1 - 5月では7位に後退している。

保証期間の延長で三菱車に眼を向けてもらい、新車の販売拡大につなげる作戦だ。かつては3番目に多いユーザーを獲得していたものの「お客様をしっかり守るという取り組みが弱体化してしまった」(三菱の役員)という反省もある。保証延長の条件となる車検入庫を通じて既納顧客を自社陣営で守り、さらに販売会社の整備部門の売り上げ増につなげる狙いも込められている。

◆トヨタは他メーカー車の保証延長プランも

三菱の思い切った保証延長に対し、各社は「現時点で延長の予定はない」(トヨタ自動車)と静観の構えだが、顧客の反応次第となろう。ホンダも具体的な検討はしていないものの、「社会の変化に合わせて随時対処していきたい」(広報部)という。

車検整備の獲得を狙った部分的な保証延長はすでに一部で導入されている。トヨタには「保証がつくし」というプランがあり、少ない負担で、走行距離に関係なく特別保証、一般保証ともに最長7年まで延長できるようにしている。このプランは日本メーカー製であれば、他社のクルマにも適用、車検獲得を鮮明に打ち出している。

新車需要の伸びが期待できない現状では、整備需要の拡大は系列販売会社の体質を強めるうえで欠かせない。三菱の新保証制度を引き金に、そうした狙いからも保証期間の見直しが行われることになろう。

《池原照雄》

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