三菱重工業、白鶴酒造、関西化学機械製作の3社が30日、三菱重工の神戸造船所二見工場内にバイオエタノール製造実証施設が竣工し、本格稼動する。
非食用の草本系植物を連続して前処理することが可能な日本初の設備で、施設では、稲わらや麦わらなどのソフトセルロースから自動車燃料用のエタノールを製造する。
施設は、農水省のソフトセルロース利活用技術確立事業の一環で2009年4月から建設してきた。3社が持つ技術を活かし、三菱重工が前処理・糖化工程、白鶴酒造が発酵工程、関西化学機械製作が蒸留精製工程をそれぞれ担当する。
稲わらなどの原料の効率的な収集・運搬についても、兵庫県の外郭団体のひょうご環境創造協会を中心としたグループで並行して検討しており、食糧に影響しない原料を使って2010年末までに現在の軽油価格よりも安い1リットル当たり90円以下のコストで製造できる技術の実証を目指す。
バイオエタノールは、石油などの代替燃料として需要が拡大しているが、サトウキビやトウモロコシの実などを原料とするものが多く、穀物の価格高騰や食糧危機を引き起こすことが懸念されている。このため、非食用植物を原料としたバイオ燃料製造技術に関心が高まっているが、セルロース系原料の場合は生産効率が悪く、エタノールの製造に大きなエネルギーの消費が必要だった。
今回のプロジェクトでは、非食用の草本系植物を使用するものの、従来のエタノール製造手法とコスト競合できる技術の確立を目指すとともに、酸、アルカリといった化学薬品や遺伝子組換え酵母を使用しない環境親和性のある手法を取り込むことで、国内農業と共存共栄できる地産地消型のソフトセルロース利活用の道を拓くことを目指す。
3社は今後、実証試験を通して非食用植物からバイオエタノールを製造する商用技術の早期確立と普及に向け取り組みを加速する方針だ。