【井元康一郎のビフォーアフター】インセンティブ終了か継続か

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2009年度上半期(4 - 9月)の日本の新車市場において、ハイブリッドカーの代表格であるトヨタ『プリウス』が初の販売台数首位を獲得した。

累計販売台数は11万6000台。5月中旬の発売から1か月で18万台もの受注を集めたプリウスのバックオーダーはまだまだ解消されておらず、今後も月間3万台近い登録台数で推移するとみられる。

登録車3位はホンダのハイブリッドカー『インサイト』で、販売台数は5万5000台。こちらはプリウスほど注文が殺到しているわけではないが、それでも月1万台前後がコンスタントに売れるという堅調さだ。

このハイブリッド2強モデルをはじめ、販売台数で上位にランキングしているクルマの大半は、いわゆる“エコカー減税”組である。ランキングでは例外的にトヨタ『カローラ』が減税対象から外れていたが、10月5日に一部改良を施してカタログ燃費を上げ、対象モデルの仲間入りを果たした。年度後半は販売台数を伸ばしてくるものと思われる。

エコカー減税や古い年式のクルマをエコカーに買い換える場合に補助金を出すスクラップインセンティブなどの自動車優遇策が特に目立っていたのは、日本、ドイツ、イギリスである。ドイツは、予算を使い切ったということで、インセンティブを打ち切った。イギリスは2010年2月まで継続を発表している。

日本はどうか。自動車取得税、重量税の減税は2012年まで継続されることが決まっている。スクラップインセンティブについては不透明だが、「できれば継続していただけると有難い」(豊田章男・トヨタ社長)と、自動車業界は政策の継続を強く求めている。

自動車メーカーの経営陣が、昨年のリーマンショック以来の自動車需要の落ち込みへの歯止め効果を期待して、インセンティブ継続を望む心情もわからないでもない。が、一方で自動車メーカー関係者の間では、このままだと日本市場は補助金前提の構造になりかねないという危惧も出てきている。

「もちろんクルマの需要がバッタリ止まってしまったときは、産業に無用な打撃が加えられるのを防ぐという点で、インセンティブは効果的な施策だったと思います。しかし、今は各社とも、本音の部分ではインセンティブを販売拡大のための格好の策と考えている。インセンティブについては、もっと早くに止めて、必要があれば追加で実施するという形にすべきだった」(自動車大手の営業担当者)

クルマが売れれば売れるほど嬉しいディーラー関係者からも、立ち止まることが日を追って難しくなっているという声が上がっている。

「自動車産業は日本の基幹産業で、しかも国の保護をほとんど受けずに成長してきた。苦境に立ったとき、国がある程度優遇するのは当たり前だ」

業界団体幹部の中には、このような意見を述べるケースもままあるが、それはいささか傲慢に過ぎるというものだ。国家予算を使ってクルマの実質値引きを支援し続けるインセンティブの矛先の収め方を、そろそろ考えるべき時に来ている。

もっとも、スクラップインセンティブは、古いクルマをエコカーに代替することでCO2排出量につながるという側面もある。鳩山政権は温室効果ガス25%削減の達成に向け、インセンティブを長期間継続するか、それとも国の経費削減に汲々としていることから、あっさりと終了させるか。判断が注目される。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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