【神尾寿のアンプラグド特別編】「若者をトヨタの潜在顧客にする」。おサイフくんQUICPayの狙い…後編

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おサイフくんQUICPayは「トヨタ車販売増」の布石

---- ショッピング重視というのは現在のクレジットカード業界全体の流れになってきていますが、一方で、一括払いが主流の日本市場ではショッピング利用時の手数料収入は加盟店からのみになります。キャッシングやローンに比べて収益拡大が難しい。

ですから、多くのカード会社がユーザーの決済総額を拡大する方向で、ビジネスモデルやサービスモデルを再構築しているわけですが、おサイフくんQUICPayは『限度額は一律10万円』でキャップをしてしまっている。キャッシングやカードローンを用意せず、しかもショッピングでの利用限度額が低いとなった場合、おサイフくんQUICPayの収益面での貢献はあまりないように見えるのですが、いかがでしょうか。

後藤) 我々としては、おサイフくんQUICPayを単独で収益商品として考えていません。トヨタの金融事業として、トヨタ自動車に送客をする。そのための入り口を作るための戦略商品だと位置づけています。

---- TS CUBIC CARDもポイントプログラムの部分で、トヨタ車ディーラーの支援、トヨタ車の販売促進のための要素が強いわけですが、それと同じ位置づけということでしょうか。

後藤) その通りです。将来的にトヨタ自動車に送客をする。この観点で我々トヨタファイナンスのビジネスを考えますと、若年層や女性層を取り込むことがとても大事になってきます。

いま現在でみますと、トヨタファイナンスのカードホルダーで20代のお客様は約10%しかいません。おサイフくんQUICPayで若年層の新規会員を獲得し、まずは『将来のTS CUBIC CARD』ホルダーになっていただくためのチャンネルにする。そして、その先にはTS CUBIC CARDからトヨタ自動車に送客していく。おサイフくんQUICPayは長期的な視野で投入する戦略商品なのです。

----- なるほど。確かに20代の頃は、ほかに欲しい物があったり、購買力がないからといった理由でクルマを買わない若者たちも、いずれ家庭を持つようになれば“必要に駆られて”クルマの購入をする可能性は高いですからね。TS CUBIC CARDへのアップグレード、そして一部はトヨタ車販売に結びつけるための布石という狙いがあるのですね。

後藤) ええ。例えば、おサイフくんQUICPayのポイントはトヨタ車購入に利用できないのですが、TS CUBIC CARDに持ち越しできるシステムにしています。おサイフくんQUICPayのユーザーがTS CUBIC CARDに移行しますと、これまで獲得したものも含めてポイントが『トヨタ車購入で優遇される』形になるわけです。

おサイフくんQUICPayの会員獲得目標は年間50万人ですが、我々はその1割程度のお客様がTS CUBIC CARDに切り替えていただけると考えています。

---- TS CUBIC CARDのホルダーは、ポイントや各種キャンペーンによって「トヨタ車の販売で有利」な潜在顧客になる。それが年間5万人ずつ積み上がることを考えれば、トヨタ車の販売に対する十分な支援になりそうですね。

◆共用化の推進でJR東日本とも連携

---- おサイフくんQUICPayは一般加盟店での利用でFeliCaクレジットのQUICPay方式を使うわけですが、DCMX miniが使うiD方式に比べると、現時点で加盟店の数がやや少ない。利用可能店舗は今後、増えていくのでしょうか。

後藤) QUICPayの広がりで言いますと、ローソンやサークルK/サンクスなどコンビニエンスストアが対応したことで加盟店は増加傾向にあります。また、セブンイレブンが採用する電子マネー「nanaco」の裏にはQUICPayのシステムが入っていますから、セブンイレブンがQUICPayに対応するのも時間の問題でしょう。コンビニエンスストアでの対応が進むことで、今後、スーパーマーケットやドラッグストア、そのほかの様々な場所でQUICPayが使えるようになっていきます。

また、トヨタファイナンスとしてはタクシーをコアに利用可能場所の拡大に力を入れていきたい。まず東京の日の丸交通でQUICPay/iDを展開するほか、名古屋でも近々にQUICPay対応のタクシーが走る予定です。

---- しかし、タクシーのFeliCaクレジットや電子マネー対応では、iDやEdyの方が先行しています。

後藤) タクシー用リーダーライターの共用化が利用促進に重要だと考えて、その準備を進めてきました。最初から共用化をするので、少し出遅れてしまったのです。

我々はタクシーのFeliCa決済対応において、QUICPayとiDの共用端末で進めていきます。さらに昨年11月にJR東日本と提携させていただきましたが、Suica電子マネーもタクシー用の共用端末に載せていく。これにより『電車とタクシー』の連携も可能になる。
タクシーはFeliCa決済のデファクト・スタンダード(事実上の標準)であるiD・QUICPay・Suica電子マネーの3つに対応させて、ユーザーの利便性を高くしていきたいのです。

---- 東京と名古屋はビジネスパーソンの行き来が多いですから、QUICPayとSuicaが共用化のスキームで広がるのはうれしいですね。

後藤) タクシーに限らず、今後、我々が加盟店開拓をする場所は、QUICPay・iD・Suica電子マネーの共用化が基本になります。トヨタファイナンスとしては、『共通の敵は現金』という考えなので、JR東日本やNTTドコモとは今後も連携していきたい。

また、まだお話しできる段階ではありませんが、今年は交通と連携したサービスなどにも重点的に取り組んでいきます。

---- 本日はどうもありがとうございました。

《神尾寿》

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