11月、組み込み総合技術展「Embedded Technology 2007」がパシフィコ横浜で行なわれた。カーエレクトロニクス、次世代デジタル家電、携帯端末などの組み込みソフトやハードは目立たないが、日本のエレクトロニクス産業を支える中枢として海外からの注目度も高い。会場にてマイクロソフト本社のオートモーティブビジネスユニット(ABU)を統括するマーク・スペイン氏を発見。同社の車載機用組み込みソフトの開発ポリシーについて話を聞くことができた。
---マイクロソフトの本社であるワシントン州レドモンドと東京都調布で開発拠点を分けたことが成功の要因ですか?
スペイン) 我々が自動車分野への進出を決めたときには、大きなふたつの流れが見えていた。ひとつは多機能が統合された車載デバイスへの進化、そしてもうひとつはコンシューマ用の様々なモバイル機器の登場だ。
前者に対しては車載機メーカーが集中する日本で車載機専用OS『Windows Automotive』の開発を、後者に対しては本社で様々なモバイル機器との接続を可能にするプラットフォーム『Microsoft Auto』の開発を行うことに決めた。
Windows Automotiveの成功要因には、日本で車載機メーカーや自動車メーカー、そして部品メーカーからなるコミュニティと緊密な関係を築くことができたことがある。彼らの要件について理解することができ、将来のニーズについても共同で考えてゆける。その結果、消費者がクルマの中でやりたいと思っていること、ほしいと思っているものを作り出すことができるようになった。
進出した当時、マイクロソフトは自動車のことをよく知らなかった。これらは日本だけでの成功のみならず、自動車業界にマイクロソフトが認められるきっかけにもなったと考えている。
---アフターマーケットのカーナビと自動車メーカー純正の車載システム、マイクロソフトの本当のターゲットはどちらか。
スペイン) アフターマーケット、自動車メーカーのラインフィットオプション、そしてディーラーオプションのすべてにフォーカスをあてている。しかし、あえて言えばもっとも重要と考えているのはラインフィットオプションだ。今後、クルマが新しい生活の価値をもたらそうとした場合にソフトウェアがキーになると信じているからだ。
しかし世界で6000万台の新車が生産される一方で、6億5000万台の既存のクルマが走っている。新しいデジタル体験を既存のクルマにも提供したいと考えているのでアフターマーケットも同じく重要と考えている。
---世界市場で人気のPNDに対する『Windows Automotive』のアプローチはどう考えるか。
スペイン) 『Windows Automotive』『Microsoft Auto』の両製品は、自動車業界で必要とされている要件、つまり温度変化、振動、バッテリー消費、ブート時間などを純正レベルで満たすようつくられている。今後、ポータブルデバイスのベンダーが他社との差別化や、より満足度の高い製品の実現を図ろうとした場合、純正レベルの高い技術水準を備えるマイクロソフトのプラットフォームを活用していきたいと考える可能性はあるでしょう。
---車載機の進化をどうみているのか。
スペイン) 私どもの製品のロードマップは、消費者、自動車メーカー、そして車載機メーカーからのフィードバックを聞きながら進めてゆく。これらの三者間でクリアになっているトレンドは、ナビゲーションやオンラインによるインフォテインメント、そして様々なデジタルデバイスを利用できる統合環境だと思う。マイクロソフトは、この“融合”を可能にする車載システムの実現に向け、プラットフォーム技術の革新に取り組んでいる。