新型日産『スカイラインクーペ』に搭載される「VQ37VHR」型3.7リットルV6DOHCのスペックは最高出力333ps/7000rpm、最大トルク37.0kgm/5200rpmというもの。
排気量1リットルあたりの比出力が約90psという数値は、実用車向けの大排気量自然吸気エンジンとしてはトップクラスだ。
が、一方で排気量1リットルあたりのトルクは約10kgmと、こちらは最新のエンジンとしては大した数字ではない。レクサス『GS350』などに積まれるトヨタ「2GR-FSE」型3.5リットルV6(11.11kgm/リットル)、スカイラインのセダンモデルに積まれる日産「VQ35HR」型3.5リットルV6(10.43kgm/リットル)などと比べても、いささか劣勢だ。
また、最高出力も数値的には良好だが、7000rpmという超高回転域でピークパワーを発生させているにしては大したことがないようにも見える。
「スカイラインクーペのエンジンの設計にあたって、一番重視したのはスペックの数値ではなくトータルバランスとフィーリングでした。スペックの数字だけを追うのであれば、もっと大きな数字にすることもできました。VVEL(バルブ作動角・リフト量連続か変システム)を採用していないセダンのエンジンより、リッターあたりのトルクは大きくできます」
エンジン製品開発グループの池田伸氏は、VQ37VHRの諸元について、こう説明する。
「トルクカーブを見てもらえばわかるのですが、このエンジンの大きな特徴は、フラットトルクであることです。最大トルクの90%を発生する領域は2400回転から7000回転までと、スカイラインセダンのエンジンに比べてきわめて広くなっています。ドライバーにとって気持ちのいいチューニングを実現できたと思っています」(池田氏)
とはいえ、スペックシート上の数字では、VQ37VHRが他のエンジンに対して決定的なアドバンテージを持てていないのも事実である。
「新世代VQエンジンの進化はまだ始まったばかり。フリクションロスのさらなる低減や直噴化など、さまざまな技術検討は行っています。これからもどんどんバージョンアップを図っていくつもりです」(池田氏)
これからもメーカー間のエンジン開発競争は当分、ヒートアップし続けそうだ。